身体拘束

職員と現場を守る!これからの介護リスクマネジメント

職員と現場を守る!これからの介護リスクマネジメント

利用者の命に関わりかねない、介護現場の事故やトラブル。しかし、どんなに気をつけていても、起きるときは起きてしまいます。介護現場での事件・事故は、利用者に危険を及ぼすだけでなく、介護職員の精神的な外傷になったり、訴訟問題に発展したりすることも。最近では、利用者の暴言や暴力から介護職員を守ったり、”モンスター家族”から施設を守ったりするという観点からも、リスクマネジメントに注目が集まっています。そこで今回は、介護現場で働く職員や施設経営者の皆さんに向けて、介護のリスクマネジメントの重要性について解説していきます。また、職員や施設をリスクから守るのに使える最新機器も紹介します。介護のリスクマネジメントとはそもそも「リスクマネジメント」とはどのような意味でしょうか。介護現場におけるリスクマネジメントとは、介護事故やトラブルを未然に防いだり、被害を最小限に抑えたりするための「予測と準備」のことです。具体的には、よくある事故の原因を分析し、事故が発生する状況を予測したり、事故が起こらないように準備したりすることを指します。しかし、介護現場においては、事故が100%起きないように対応することはほぼ不可能です。そのため、事故を防ぐための予測・準備はもちろん、事故の発生に備えた準備も必要になってきます。リスクマネジメントが重要な3つの理由介護現場は、提供するサービスの特性上、他業界の現場よりも重大事故やトラブルが発生するリスクが高いといわれています。サービス利用者である高齢者は加齢とともに心身機能が低下しているため、事故やトラブルが起こりやすい状況にあるからです。ここでは、なぜ介護現場でリスクマネジメントが必要なのか、3つの観点から解説します。事故やトラブルが利用者の命を危険にさらす介護現場で起こる事故やトラブルは、利用者の生命や健康を危険にさらしかねません。たとえば、利用者が転倒して骨折した場合、命にかかわらなくても、骨折のせいで身動きできなくなったために、廃用症候群や認知症が進行してしまう恐れがあります。高齢者にとっては、小さなケガも大きな被害となりうるのです。増加傾向にある介護事故の高額訴訟介護サービスの普及にともなって、介護事故の訴訟件数も増加傾向にあるといわれています。その背景には、介護職員の人手不足によるサービスの低下や、介護を受けることに対する利用者や家族の意識の変化などがあると考えられています。それにともない、高額訴訟も増えてきました。あるケースでは、夜間に利用者がトイレで転倒し亡くなったことに対し、「施設の管理が悪い」として、事業所に3402万円の支払いが命じられています(※)。こうした高額な賠償金請求は、介護事業所を倒産に追い込む恐れもあります。介護事故の高額訴訟事例(※) 転倒による死亡 3402万円 誤嚥による死亡 1400万円 入浴介助中の水死事故 約2160万円 ※引用:介護リスクマネジメント研究会・小林彰宏監著, 2016, 『これならわかる〈スッキリ図解〉介護事故・トラブル』株式会社翔泳社また、一度訴訟問題が起きれば、その地域における介護事業所の信頼は失われるでしょう。リスクマネジメントは、利用者だけでなく事業所の存続のためにも不可欠になってきているのです。職員のモチベーションを左右する見過ごされがちですが、リスクマネジメントは介護職員の人材確保という観点からも重要です。 介護のお仕事研究所による調査 では、介護職員の9割以上が、利用者からの暴言・暴力を「受けたことがある」と回答していることがわかっています。こうした利用者から介護職員への暴言・暴力も、介護現場におけるリスクのひとつです。画像引用: 介護のお仕事研究所 また、最近では金銭目的で職員や施設に理不尽な要求をする”モンスター家族”も問題になっています。仮に、これらのリスクに対して介護事業所が何の対策も講じず放置しておけば、介護職員の不安や不満は高まり、モチベーションは下がる一方でしょう。いずれは施設全体の士気の低下につながり、離職率を上昇させることになりかねません。介護職員にとっての処遇・職場改善の一環としても、リスクマネジメントは重要性を増してきているのです。介護リスクマネジメントの2つのアプローチ介護現場では、利用者・職員・施設を守るために、リスクマネジメントが不可欠であることがわかります。ここからは、介護現場でのリスクマネジメントのアプローチ方法について解説してきます。介護におけるリスクマネジメントには、大きくわけて2つのアプローチがあります。利用者の尊厳や安全を守る 介護職員や組織を守る同じ事故に対しても、アプローチ方法に応じて取られる対策が異なります。ここでは、「利用者Aさんの転倒事故」を例に、1と2それぞれの観点から具体的な対策を考えてみましょう。1.利用者の尊厳や安全を守る利用者の尊厳や安全を守るという観点でまず考えられるのは、転倒事故を起こさないように、類似事故のヒヤリ・ハット事例を事業所内で共有することです。ヒヤリ・ハットが共有されていれば、転倒事故が起きやすい状況を未然に避けたり、転倒しにくい環境をつくったりすることができます。また、利用者Aさんの心身状態や転倒リスクを把握しておくことも大切です。心身状態に応じてオペレーションを変更したり、転倒リスクが高い時間帯に見回りを行ったりという対策が必要になってくるでしょう。その際、「転倒しないように身体拘束する」という考え方は、利用者の尊厳を損害していることになるためNGです。2.介護職員や組織を守る介護職員や組織を訴訟などから守るという観点では、事故発生時のエビデンス(証拠・根拠)となる記録を残すことがリスクマネジメントになります。万が一、Aさんが転倒してしまった場合に考えられるリスクとして、「転倒事故対策を怠っていたとして、利用者や家族が訴訟を起こす」「転倒時にできた傷やアザを、職員からの虐待でできたものではないかと疑われる」などがあげられますが、これらのリスクを最小限におさえるためには、エビデンスが何よりも重要だからです。記録といえば、事故発生時に書く「事故報告書」などの文書作成をイメージしがちですが、事故現場を写真で残したり、関係者の話を録音したりといった方法も、エビデンスとしては有効です。最近では、見守りロボットに撮影・録画機能がついているものもあり、職員や施設のリスクマネジメントとして活用されるケースも増えてきました。そんな見守りロボットをいくつか紹介します。Dream Care(ドリームケア)|DREAM TOKYO株式会社取材記事を読む: 夜間の見回り回数が1/3に!現場発信の見守りロボ「Dream Care(ドリームケア)」|株式会社DREAM TOKYO Dream Care(ドリームケア)は、「万が一のときにエビデンスを残せる見守りロボットを作ってほしい」という介護事業所の依頼を受けて開発された、非接触型の見守りシステムです。本体にはカメラが搭載されており、事件・事故が起きやすいときだけ作動して、記録を残します。2018年4月には新たにスナップショット機能が追加され、事故リスクが高いと判断した瞬間を写真にとり、その写真をPCに表示できるようになりました。シルエット見守りセンサ|キング通信工業株式会社取材記事を読む: 離床はもちろんはみ出しも!人の動きを検知する「シルエット見守りセンサ」|キング通信工業株式会社 シルエット見守りセンサは、ベッド上の空間を検知する赤外線センサを使った見守りシステムです。ベッド上にいる利用者のシルエットのみを映し出した「シルエット画像」で、プライバシーに配慮しながらも状況確認できるのが特徴です。シルエット画像は、起き上がり通知がされた場合に前後合わせて15秒が録画で残るようになっているため、万が一のときのエビデンスとして活用できます。組織の自衛が利用者の身体拘束を招くこともリスクマネジメントを考えるうえでは、利用者を守るためのアプローチはもちろん、組織やそこで働く職員を守るためのアプローチも欠かせないことがわかりました。しかし、組織や職員の自衛および法的な責任の回避ばかりを意識してしまうと、利用者の尊厳が損なわれる危険性もあります。たとえば、転倒事故を避けるあまりにAさんをベッドに縛りつけた場合、それは身体拘束にあたります。一般的に、利用者の行動自由度が高ければ高いほど、転倒などのリスクも高くなります。しかしだからといって、事故を起こさないために利用者の自由を奪ってよいということにはなりません。介護のリスクマネジメントでは、利用者の尊厳と組織としての自衛のバランスを取りつつ、持続的な対策を取ることが求められるのです。関連記事を読む 10年で倍増!身体拘束の実態と介護ロボットの光と影|介護ロボットONLINE 介護のリスクマネジメントの効果は大きい介護現場において、リスクマネジメントは事件や事故を未然に防ぐだけでなく、職員が安心して働ける環境をつくるという意味でも重要視されてきています。適切なリスクマネジメントを行うことで、利用者や家族、地域から信頼を得たり、スタッフの離職率を引き下げたりといった効果が期待できます。しかし、職員や施設を守ることだけを重視しすぎると、利用者の尊厳を損なってしまう恐れもあります。利用者の尊厳と組織としての自己防衛のバランスをとりつつ、プライバシーに配慮した見守りロボット等を活用した新しいリスクマネジメントが今、求められています。<参考資料>介護リスクマネジメント研究会・小林彰宏監著, 2016, 『これならわかる〈スッキリ図解〉介護事故・トラブル』株式会社翔泳社介護のお仕事研究所「9割超が「経験あり」、介護職が受ける暴言・暴力に関する実態結果を発表」(2018年4月17日, https://kaigo-shigoto.com/lab/archives/4082)

10年で倍増!身体拘束の実態と介護ロボットの光と影

10年で倍増!身体拘束の実態と介護ロボットの光と影

要介護者の行動を制限し、自由を奪う「身体拘束」。実は、この10年の間で倍増しているのをご存知ですか?厚生労働省は、平成30年度の介護報酬改定で身体拘束を厳罰化する改定を加える(※1)など、問題視しています。身体拘束が増えている背景には、認知症の増加や、医療・介護業界の人手不足があります。身体拘束は高齢者の尊厳を侵害するだけでなく、身体機能の低下も招く危険な行為です。そんな身体拘束を減らすために、今、何ができるのでしょうか?ここでは、身体拘束に該当する行為や身体拘束の実態、身体拘束ゼロを目指す取り組みなどを紹介していきます。※2018年3月14日追記しました。※1 「身体拘束、来年度から対策強化へ 減算を拡大 要件も厳格化 厚労省方針」より身体拘束とは面会に行った桃子さんは、手足を縛られて身体が硬直した高志さんを見て唖然としました。鼻から栄養剤のチューブを入れるため、嫌がって抜かないようベッドに手足を縛り、手には指が使えないようミトン型の手袋をされていたのです。離床したときは、個室から出られないようにリクライニング式の車イスに動体をベルトで縛り、脚の間もベルトで巻かれていました。 引用元:東田勉(2014年)『認知症の「真実」』講談社現代新書こうした身体拘束が、とくに認知症の高齢者に対して行われている実態があります。身体拘束とは、手足をベッドにしばりつけたり、鍵のかかった部屋に閉じこめたり、ベッドやいすを使用して行動を制限したりすること。厚生労働省は、具体的として下記のような行為を挙げています(※2)。身体拘束の具体例 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。  点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。 ※2 「 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 」よりこれらに該当しなくても、不用意に行動を制限する場合、身体拘束とみなされることがあります。たとえば、次で紹介する「スピーチロック」などがそうです。3つの身体拘束|スリーロックとは身体拘束をさらにひろく定義する言葉として、「スリーロック」があります。「スリーロック」は、しばしば3つの身体拘束とも呼ばれます。1.スピーチロック言葉による拘束です。「ちょっと待っててね」「~しちゃダメ」「立ち上がらないで」「どうしてそんなことするの」といった叱責の言葉も含まれます。2.ドラッグロック薬物の過剰投与、不適切な投与で行動を抑制することです。夜間の徘徊などを、眠剤や安定剤、泌尿器系の薬でコントロールすることもこれに当たります。3.フィジカルロック物理的な拘束をして身体の動きを制限することです。先ほど上げた11の具体例もここに当てはまります。スピーチロックやドラッグロックは目に見えない分、ケアする側も自覚がないまま行ってしまうことがあります。スリーロックの関連記事はこちらから介護の身体拘束は、どこからが当てはまるのか?(認知症オンライン)身体拘束が認められるケース|緊急やむを得ない場合身体拘束は、いついかなるときでも禁止されるというわけではありません。場合によっては、身体拘束をしてもやむを得ないとされています。厚生労働省は、身体拘束が認められる要件として以下の3つを定めています。 切迫性 利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険に晒される可能性が著しく高いこと 非代替性 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと 一時性 身体拘束その他の行動制限が一時的なものであることこの3要件を満たす場合は、「緊急やむを得ない場合」として身体拘束が認められます。身体拘束の実態本来であれば「緊急やむを得ない場合」のみ行われる身体拘束。しかし、身体拘束はこの10年間で増加傾向にあります。身体拘束 倍増の背景に「認知症の増加」「人手不足」「精神保健福祉資料」によれば、全国の精神科病院および一般病院精神科病床の入院患者のうち、2014年に身体拘束を受けていた患者数は全国で1万682人と報告されています。これは、2003年の患者数の約2倍にあたる数です。なぜ、身体拘束は増えているのでしょうか?その理由として、認知症の増加が考えられます。「平成28年版高齢社会白書」によれば、2025年には65歳以上の認知症患者数が約700万人に増加と推計されており、高齢者のうち5人に1人が認知症となっている計算になります。認知症が増加する一方で、介護の人手不足は年々深刻化しています。人手不足が深刻化する一方で増加の一途をたどる認知症の患者や利用者に、医療や介護の現場が対応しきれていない実態が身体拘束という形であらわれているといえます。 実際に、京都府が実施した調査によれば、 身体拘束の廃止が困難な理由として、半数を超える58.9% の施設が「介護を担当する職員が少ない」と回答したことが分かっています。 つまり、「介護の人材不足」が身体拘束を招いている一因となっているといえるでしょう。「身体拘束を断ればいい」ができない理由「身体拘束が嫌なら、本人や家族が断ればいいじゃないか」ーーそう思うかも知れません。しかし現実には、身体拘束を拒否するのが難しいケースもあるのです。たとえば、本人が身体拘束をやめてほしいと訴えた場合、その訴え自体が認知症や精神症状だと捉えられてしまうケースです。場合によっては、訴えたせいでさらに身体拘束がひどくなる恐れもあります。家族が訴える場合はどうでしょう。施設に本当に充分な人的余裕がなく、また身体拘束を減らすことに積極的でない場合、退院や退所を勧められる危険性があります。在宅で介護できない事情がある家族はそう言われてしまうと困るので、けっきょく我慢するしかない、というケースも実際に存在するのです。なぜ身体拘束は問題なのか?|3つの弊害厚生労働省も問題視する身体拘束。そもそもなぜ身体拘束は問題なのでしょうか?身体拘束は、おもに3つの弊害を招くと考えられています。1.精神的苦痛を与える不適切な扱いや不用意な抑制は、人権侵害や虐待にあたる許しがたい行為です。とくに「身体を縛る」「介護衣(つなぎ服)を着せる」といった行為は、高齢者に不安や怒り、屈辱、あきらめといった大きな精神的苦痛を与えます。2.身体的な機能を奪ってしまう長時間不自然な体勢を強いる拘束や、向精神薬を過剰に服用させて動きを制限する拘束は、高齢者の身体機能を奪う恐れのある危険な行為です。関節の拘縮や筋力低下などを招きかねず、要介護度の重度化につながることも少なくありません。3.家族やスタッフに後悔やトラウマを残す身体拘束は、された本人だけでなく周囲にも影響を与えます。たとえば、拘束されている高齢者を見て、後悔や混乱、苦悩といったトラウマを抱える家族も存在します。また、身体拘束をするスタッフも後悔やトラウマを抱えることがあります。身体拘束をしていることで士気がさがり、離職の原因になることもあるのです。身体拘束は減らせるのか?高齢者の人権を脅かし、身体機能の低下や精神的混乱も招きかねない身体拘束。そんな身体拘束を減らそうと、全国でさまざまな取り組みが行われています。神奈川県の取り組みたとえば神奈川県では、身体拘束廃止に関する研究事業を行い、身体拘束をせずにすむサービス計画書の作成方法などを伝えています。 報告書では、臀部の皮膚を掻き壊してしまう利用者に対して、ミトン型の手袋をつける代わりに、以下のような対応を取ることをおすすめしています。 身体拘束の代わりにとるとよい対応 ・排泄物による臀部のかゆみとの関係を考え、排せつ援助の適正度を再考・刺激の少ない石けんを使用・かゆみに対して気を紛らわせる環境づくり・臀部での掻き壊しがあるため、車いすの座面調整、時間短縮 参考:神奈川県「 介護保険施設等における身体拘束廃止に関する研究事業 」この対応の裏には、「身体拘束をせざるを得ない状況になるほど高齢者が暴れるには、きっと何か理由があるはずだ」という考え方があります。その原因を取り除くことで、身体拘束ゼロを実現しようという試みなのです。各施設での取り組み~「身体拘束ゼロへの手引き」から~厚生労働省が発行している「身体拘束ゼロへの手引き」では、身体拘束ゼロに取り組む病院や施設の事例が紹介されています。ここでは、その取り組みを抜粋して紹介します。東京都八王子市にある上川病院では、「縛る」身体拘束をなくすために、以下のような対応をとっています。「縛る」身体拘束をゼロにするためにとった対応・「拘束」を「縛る」にいい換える・施設内のひもを捨てる・縛らないことの責任は責任者がとると宣言する・管理者とスタッフが現場を共有し、いっしょに縛らないですみ方法を考えるこうした対応を徹底したことによって、縛る非効率さに気づいたり、縛っていた頃に感じていた罪悪感がなくなったりするという結果が生まれたとのことです。見守りの強化が身体拘束を減らす?こうした取り組みとは別に、身体拘束を減らす工夫として「見守りの強化」があります。 厚生労働省は「 身体拘束ゼロへの手引き 」にて、「人員不足を理由に、身体拘束をやむなしとするのは本末転倒」だと指摘し、身体拘束をしない工夫のポイントとして「見守りの強化・工夫」を挙げています。その解決策として、最先端のロボット技術を搭載した見守りロボットに期待が集まっています。次章では、すでに市販されている見守りロボットをご紹介します。見守り強化につながる介護ロボット ベッド見守りシステム| OWLSIGHT (アウルサイト)福祉用「OWLSIGHT (アウルサイト)福祉用」は、非接触・無拘束のベッド見守りシステムです。特徴は、立ち上がりや離床はもちろん、悶えや呼吸などの非常に小さな動きも検出できるところ。これにより、無呼吸症候群の方が寝ている間にちゃんと呼吸できているかなどまで確認できます。OWLSIGHT (アウルサイト)福祉用では人の様子は撮影されないため、一般的なカメラと比較して侵害度が低く、プライバシーに配慮されているといえます。取材記事はこちらから 慶応大学発ベンチャーが開発!非接触の見守りシステム 「OWLSIGHT (アウルサイト)福祉用」|株式会社イデアクエスト マット式見守りシステム|眠りSCAN「眠りSCAN」は、マットレスの下に敷くだけでベッド上にいる人の状態をリアルタイムでモニタリングできる、非接触型の見守りシステムです。センサーにより、体動や呼吸・心拍などを検知し、睡眠・覚醒・起き上がり・離床などの状態が分かります。モニターでは、イラストによって状態を表示し、数値などでバイタルデータを表示します。取材記事はこちらから ケアプラン改善にも!次世代マット式見守りシステム「眠りSCAN」|パラマウントベッド株式会社 予測型見守りシステム| Neos+Care(ネオスケア)「Neos+Care(ネオスケア)」は、3Dセンサーを用いて人の動きを検知し、それをシルエット画像で表示する予測型見守りシステムです。センサーでは、起き上がり動作や端座位、柵越え、ずり落ち、離床、入退室などの検知が可能です。モニターではシルエット画像が表示されるため、通常のカメラ映像に比べプライバシーに配慮されているといえます。取材記事はこちらから業界初!予測型見守りシステム「Neos+Care(ネオスケア)」|ノーリツプレシジョン 3Dセンサ見守りシステム|シルエット見守りセンサ 「シルエット見守りセンサ」は、ベッド上の空間を検知する赤外線センサーを使った見守りシステムです。センサーによって起床やはみ出し、離床を検知します。モニターでは個人の特定ができないシルエット画像で表示されるため、通常のカメラ映像に比べプライバシーに配慮されているといえます。取材記事はこちらから 離床はもちろんはみ出しも!人の動きを検知する「シルエット見守りセンサ」|キング通信工業株式会社 介護ロボットが新しい身体拘束を生んでしまう?ご紹介したように、ほとんどの見守りロボットは要介護者のプライバシーに配慮した見守りができるよう、機能を制限するなどの工夫をしています。しかし、それでもこうした見守りロボットを指して「身体拘束にあたるのではないか」「人権侵害になるのではないか」と疑問を呈する人も多くいます。 ネット上では、センサーなどによる身体拘束について、さまざまな意見があがっています。 ねぇねぇ!センサーマットって身体拘束なの?— りょうこ (@r_ryokooo) 2012年1月25日 介護業界で身体拘束について、よく問われますが、よくわからないのが、センサーマットとか離床センサーは拘束になるケースもあると言いますが、どこまでが拘束なのかがわからなくなります。— グータラ介護士 (@wild78644079) 2017年11月13日 以前見学した施設でのこと。離床センサーを希望したら、それは身体拘束にあたるから当施設は使いません、と。でも母はコール使えず、今フラつきながら勝手に歩こうとしてて非常に危険、少ない職員でどう気がつくの?と質問したら「ベッドに鈴つけます」と。(((猫かよ!)))— フルフル (@chapter1925) 2017年7月23日 前に身体拘束防止の研修でフットセンサーも身体拘束って言われた。センサーが鳴ってその人の動きを抑制するなら拘束だけど、動こうとする人が転んだりする危険がないよう介助にすぐ行けるようにするためなら問題ないんじゃって言ったらそれでも拘束ですって言い切られたけど、やっぱり違うよね。— 釦 (@botao_tomomi) 2012年7月19日 厚生労働省は、センサーが身体拘束にあたる可能性を示唆厚生労働省は「 介護ロボット重点分野別 講師養成テキスト 」 にて、現在介護施設で使用されている認知症老人徘徊感知機器(センサー)が身体拘束にあたる可能性を示唆しています。切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たさない場合に安易にセンサーを使用することに関して、「人権を侵している」と注意喚起しているのです。 見守りロボットに対しても危険性を指摘 見守りロボットに関しても、同様の危険性を指摘しています。とくに映像監視型の見守りロボットを例にあげ、「可視化した画像を見ているだけでは監視・抑制機器となりかねない」と述べています。具体的には、センサーの感知をうけて、 「動かないで」 「まだ寝ててください」 などの対応、いわゆる“スピーチロック”が身体拘束につながるとしています。介護ロボットで身体拘束ゼロをめざすためにとはいえ、すでに多くの施設で、見守りロボットやセンサーが身体拘束廃止のために使われています。また自治体によっては、身体拘束廃止への工夫として、見守り機器の使用を推奨しているケースもあります(※3)。従来の徘徊感知機器にせよ、ロボット技術を活用した最先端の見守りロボットにせよ、大切なのはそれらをいかに使いこなすかという点にあるといえるでしょう。 ※3 岡山県「身体拘束のないケアの実現に向けて」より身体拘束を生まない見守りロボットの使い方厚生労働省は「 介護ロボット重点分野別 講師養成テキスト 」 にて、見守りロボットを使用する際の重要なポイントとして下記を上げています。  画像や履歴から、行動のきっかけや原因・背景を分析する 「どんな生活がしたいのか」という思いを汲み取り、ケアプランに位置付ける  職員同士で情報を共有し、チームで取り組む 定期的にモニタリングを実施し、その必要性について見直しを行うセンサーや見守りロボットが身体拘束を生む恐れがあることをじゅうぶんに理解した上で、そうならない使い方を模索することが、今後の課題となるでしょう。見守りロボットは“グレーゾーン”現在のところ、センサーや見守りロボットが身体拘束にあたるかどうかはグレーゾーンだといえます。使い方によっては、センサーや見守りロボットがスピーチロックなどの身体拘束を招くことにもなりかねません。そうした機器を活用する、もしくはこれから活用しようとする介護従事者は、監視・抑制機器ではなくあくまでも要介護者の自立支援機器としての活用法を十分考える必要があるでしょう。見守りロボットを「監視」という身体拘束を生むものとするか、はたまた身体拘束を減らす救世主とするかは、介護現場で働くあなた次第といえそうです。 <参考資料>介護のニュースサイト Joint「身体拘束、来年度から対策強化へ 減算を拡大 要件も厳格化 厚労省方針」(2017/11/20, http://www.joint-kaigo.com/article-5/pg75.html)認知症オンライン「介護の身体拘束は、どこからが当てはまるのか?」(2017/11/20, https://ninchisho-online.com/archives/13096/)日本看護倫理学会 臨床倫理ガイドライン検討委員会(2015 年6月)「身体拘束予防ガイドライン」NPO法人 PandA-J(2011年)「サービス提供事業所における虐待防止指針および身体拘束対応指針に関する検討」厚生労働省(2015年)「 介護ロボット重点分野別 講師養成テキスト 」特定非営利活動法人 地域ケア政策ネットワーク(2017年3月)「 身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた 介護相談員の活用に関する調査研究事業 報告書 」 特定非営利活動法人 地域ケア政策ネットワーク 介護相談・地域づくり連絡会(2017年3月)「 身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた 介護相談員の活用に関する調査研究事業 報告書」京都府(2015年)「 平成27年度介護保険施設等における身体拘束状況調査結果 」

実はメリットがいっぱい!神奈川県の「さがみロボット産業特区」とは?

実はメリットがいっぱい!神奈川県の「さがみロボット産業特区」とは?

全国でも1・2を争うスピードで高齢化が進んでいる神奈川県。そんな神奈川県では、深刻化する超高齢社会にむけて、3つの「特区」を設けて独自の取り組みを行っています。「特区」とは、規制緩和などの特例措置が適用される特別なエリアのこと。今回は、そのうちのひとつである「さがみロボット産業特区」をご紹介します。さがみロボット産業特区とは?画像提供: さがみロボット産業特区特設HP さがみロボット産業特区は、生活支援ロボットの研究開発や、実用化・普及を推進しているエリアです。生活支援ロボットとは、介護・医療、高齢者等への生活支援、災害対応など、人々の生活を支えるロボットをさします。一般的に想像するような二足歩行ロボットだけでなく、ロボット関連技術を使った製品や機器、たとえば、高齢者の見守りセンサーやドローンのようなものも含まれます。そうした生活支援ロボットの実用化を通じて、地域の安全・安心を実現することが目標として掲げられています。そのために、特区ではおもに4つの支援を行っています。1.規制緩和ロボットの実用化に向けて必要となる規制緩和について国との協議を行い、実証実験や実用化を支援しています。たとえば、通常であれば市町村等からしか受け付けていない介護保険適用の提案も、この特区から行うことが可能です。2.開発支援企業や大学等の各機関がもつ技術・資源を最適に組み合わせる「神奈川版オープンイノベーション」によって、共同研究開発を促進します。その他、「重点プロジェクト」の実用化に向けて、アドバイザー支援や広報支援、国の補助金等の獲得に向けた支援等も行っています。3.実証実験生活支援ロボットの実証場所やモニターのコーディネートを行っており、 「重点プロジェクト」や「公募型ロボット実証実験支援事業」では、実証実施にかかる一部経費を補助しています。 「公募型ロボット実証実験支援事業」では、毎年度全国から公募を行っています(※  平成29年度の募集は終了)。 また、本格的な実証実験の前に、あらかじめ動作確認等を行うことができる「プレ実証フィールド」を用意しています。4.立地支援特区制度を活用して新たに事業展開をはかる企業にたいして設備費など投資額の一部を補助したり、低い利率で融資を受けられる制度があります。具体的には、「企業誘致促進補助金」では、県外からの立地の場合、投資額の10%・上限額10億円が、「企業誘致促進賃料補助金」では賃料月額の2分の1・上限900万円が補助されます。さがみロボット産業特区で商品化した介護ロボットさがみロボット産業特区の支援によって、これまでに数々のロボットが商品化されてきました。その中でも、今回は介護ロボットに絞って紹介していきます。パワーアシストハンド|株式会社エルエーピー画像提供: さがみロボット産業特区特設HP 「パワーアシストハンド」は、脳血管疾患などにより麻痺した手指や固まりかけている関節の曲げ伸ばしをサポートするロボットです。専用グローブのなかに手を入れることで、空気圧を利用したシステムで手指の曲げ伸ばしをサポートしてくれます。特区では、実証実験や発売に当たっての検査や手続きに関するアドバイス等の支援を行いました。ReWalk(リウォーク)|株式会社安川電機 画像提供: さがみロボット産業特区特設HP ReWalk(リウォーク)は、脊髄損傷により起立できなくなってしまった方向けの歩行アシスト装置です。腕時計型のコミュニケータと補助杖と一緒に使用します。センサーが身体の傾きなどを検知し、それに合わせて歩行をアシストしてくれます。特区では、神奈川リハビリテーション病院における実証実験を支援しました。 OWLSIGHT(アウルサイト)|株式会社イデアクエスト 画像提供: さがみロボット産業特区特設HP  OWLSIGHT(アウルサイト)は、非接触・無拘束の見守りシステムです。ベッドのそばに取りつけることで、ベッドの上にいる人の立ちあがりやもたれかかりなどを検知するほか、もだえやふるえのような小さな動きも検知してくれます。特区では、2ヶ所の介護施設で一定期間使用してもらい、そこで出た意見を改良に反映させ、商品化を実現しました。ベッドサイド水洗トイレ|TOTO株式会社画像提供: さがみロボット産業特区特設HP ベッドサイド水洗トイレは、ベッドのそばに設置できるポータブル水洗トイレです。 水洗機能により、 従来のポータブルトイレのメリットをそのままに、ポータブルトイレでは気になりがちなニオイや処理の負担が軽減されています。特区では、介護施設において排泄に関する実態調査を実施するとともに、高齢者宅においても実際に一定期間使ってもらう実証実験を支援しました。さがみロボット産業特区だからできることさがみロボット産業特区の取り組みは、ロボットメーカーの開発支援だけではありません。ロボットの実用化・普及によって、県民や介護施設の課題解決をめざしたさまざまな取り組みも行っています。ここでは、県民や介護施設が利用できる取り組みをまとめました。1.ロボット体験施設で、介護ロボット等が体験できるロボット体験施設とは、住宅展示場内のモデルハウスで、実際の暮らしに近い環境でロボットを体験できるロボットのショールームのことです。現在は、厚木会場・茅ヶ崎会場にてロボットが展示されています。展示されているロボットは以下のとおりです。 うなずきかぼちゃん いまイルモ  パルロ  ハロー!ズーマー パワーアシストハンド    など ロボット体験施設のほかに、ロボット体験認定ルームもあります。こちらは、企業のショールームやすでにロボットを活用している福祉施設で、もっているロボットを一般公開している施設をさします。施設によって公開しているロボットが異なるので、事前に確認するとよいでしょう。 →参考: ロボット体験認定ルーム 一覧 2.ロボット体験キャラバンで、介護ロボットの説明が聞けるロボット体験キャラバンとは、 介護施設等の実際の現場まで生活支援ロボットを持ってきてもらい、説明を聞いたり体験できたりする出張型の説明会および体験会のことです。 今年度からは、介護施設や医療機関に加え、地域のコミュニティなども訪問先に加わりました。  ロボット一覧 の中から事前に6種類から8種類のロボットを選び、当日に持ってきてもらいます。  現在、第3期募集が行われている最中です。第3期募集期間■平成29年11月1日(水曜日)から平成30年1月31日(水曜日)まで※具体的な訪問日は別途調整訪問先対象■県内の介護・障がい者(児)施設、医療機関、地域のコミュニティ、福祉イベント、学校など※応募者多数の場合は先着順 訪問先での流れ■訪問時間…2~3時間程度■内容…ロボットの機能・使い方などの説明、ロボットの体験(適宜、質疑応答)、アンケートの記入 3.生活支援ロボットのモニター制度で、一定期間ロボットが試せる 生活支援ロボットのモニター制度とは、購入やリースをする前に一定期間ロボットを試せる制度です。神奈川県内の介護施設や医療機関等が対象ですが、ロボットによっては、県内在住の個人の方も申し込み可能です。モニター期間は1ヶ月で、試用後は簡単なアンケートに回答する必要があります。 現在は12のロボットから選ぶことができます(※1)。※1  ロボット一覧 にて「モニター対象」と記載のあるもの募集期間■平成29年4月14日(金曜日)から平成30年1月19日(金曜日)までモニター募集対象■神奈川県内の介護・障がい者(児)施設・医療機関・学校など※ロボットによっては、県内在住の個人の方も申し込み可能4.ロボット導入支援補助金で、最大200万円の補助が受けられる さがみロボット産業特区で商品化したロボットを導入する施設等向けに、最大で200万円の「ロボット導入支援補助」制度があります。こちらはロボットが社会の中で活用されていることを多くの方に知ってもらうため、 原則として神奈川県内の法人による購入が補助対象となりますが、一部のロボットは個人も対象になります。募集期間■平成29年4月14日(金曜日)から平成30年1月31日(水曜日)まで※ 予算の上限に達した場合には、期限前でも受付終了 補助金額 ■ロボット1台ごとに、購入価格(本体価格+対象付属品等の価格)に3分の1を乗じた額か、200万円のいずれか低い方の額を補助 まとめ 介護ロボットをはじめとする生活支援ロボットの実用化・普及を全国に先駆けて行う「さがみロボット産業地区」。実は開発メーカーだけでなく、介護施設や介護ロボットの購入(レンタル)を考えている施設等にとってもたくさんのメリットがある取り組みなのです。介護ロボットの導入で介護報酬が加算される可能性が高まってきた今、こうした支援制度を活用することで介護ロボットの活用がより身近なものに感じられるでしょう。 介護ロボットONLINEでは、独自の取り組みを行う自治体を今後も特集していきます。 <参考資料>さがみロボット産業特区特設HP

介護ロボが夜勤職員の代わりに!見守りロボット導入で報酬加算、厚生労働省が発表

介護ロボが夜勤職員の代わりに!見守りロボット導入で報酬加算、厚生労働省が発表

2018年4月に行われる介護報酬改定。すでに改定に向けてさまざまな議論が行われています。そんななか、厚生労働省は見守りロボットを導入することで加算対象となる夜勤職員の数を減らしてもよいとする方針を固めました。一言で言えば、見守りロボットが夜勤職員の代わりになるということです。見守りロボットとは?どのくらい導入したら加算が取得できるの?など、詳しく解説していきます。※2018/01/09更新しました。 見守りロボが夜勤職員の代わりに!?夜間職員配置加算が緩和話題になっているのは、「夜勤職員配置加算」の緩和です。見守りロボットの導入で、「夜勤職員配置加算」を取得しやすくしようとしているのです。夜勤職員配置加算とは?夜勤が発生する特別養護老人ホーム(以下、特養)では、介護の質を保証するためおよび介護職員の過負担を防ぐために、夜間に配置する最低人員数が決められています。介護報酬制度では、この最低基準よりも多く夜間に人員を配置した場合、報酬加算するシステムがあります。これを夜勤職員配置加算と呼びます。現行のルールでは、夜間に最低基準よりも1人以上多く職員を置いた場合に報酬が加算されます。加算要件に「見守りロボット」が追加される?今回の改定では、「最低基準よりも1人以上多く置いた場合」という加算要件に以下の2つの要件を追加しようとしています。1.ベッド上の入所者の動向を検知できる見守りロボットを、入所者数の15%以上に設置している場合 2.見守りロボットを安全かつ有効に活かすための委員会を設置し、必要な検討を行っている場合この両方を満たしている場合に、夜勤職員の数が最低基準を0.9人上回っていれば取得できるようにするとしています。つまり、見守りロボットが夜勤職員の0.1人分に相当するということです。これによって夜勤職員の数を減らすことはできなくとも、職員の勤務時間を減らすことはできるので、休憩時間が多くとれるなどのメリットがあると考えられます。見守りロボットの効果は?気になるのは、見守りロボットが本当に夜勤職員0.1人分の働きができるのか?という点です。この疑問に応えるべく、厚生労働省は平成29年5月~8月にかけて見守りロボットの効果検証を実施しました。この検証により、見守りロボットには介護職員の負担軽減効果や業務改善効果があると判明したのです。ナースコールによる訪室回数が6分の1に減少実証研究では、 非接触の見守りシステム  OWLSIGHT (アウルサイト)福祉用 や マット式見守りシステム 眠りSCAN を含む7機種が採用されました。その結果、導入後の訪室回数が減少したという結果がでたのです。とくにナースコールによる訪室は導入前の6分の1まで減っていることから、介護職員の負担を減らしつつ、必要なときに訪室できていることがわかります。ヒヤリハット、介護事故が0件に!ふたつめの効果として、ヒヤリハットや介護事故の減少があげられます。見守りロボット導入から3回調査が行われましたが、回数を重ねる毎にヒヤリハットや介護事故の件数がすくなくなっていき、最終的には0件になっています。半数以上の介護職員が高評価介護職員への聞き取り調査では「夜間も安心して見守ることができる」と回答したのが50%、「介護者の心理的負担が軽くなる」と回答したのが42.8%と、過半数が好意的な評価をくだしています(複数回答)。ただし、「必要以上に見に行くこととなってしまう」と18.8%が回答しており、状況や使い方によっては、導入前よりも訪室を増やしてしまう可能性も示唆されています。対象となる見守りロボットは未定。今回の基準緩和の対象となる見守りロボットについては、現在のところ「 高齢者がベッドから落ちそうになったり、はいかいしたりした場合、センサーが感知して知らせる機器 」とのみ報道されています( NHKニュース より引用)。よって、対象となる見守りロボットがはっきりと明示されているわけではありません。ここでは、厚生労働省による実証実験に採択されたロボットや、経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」において開発された介護ロボットを中心に、すでに市販されている見守り機器をご紹介します。※ここでご紹介する見守り機器がかならずしも介護保険に適用する見守りロボットであるというわけではありません。Neos+Care(ネオスケア)Neos+Care(ネオスケア)は、3Dセンサを用いて人の動きを検知し、それをシルエット画像で表示することで、早く正確に、しかもプライバシーに配慮しながら見守りができる予測型見守りシステムです。2017年春には「生体モニターオプション」も追加され、対象者の3種の生体状態(体動:身体を動かす動作、静止:椅子やベッドで安静にしている動作、停止:生体反応がない状態)をリアルタイムに把握することができるようになりました。開発メーカーによれば、 Neos+Care(ネオスケア) を導入した現場からは「転倒の回数が減った、転倒者の数が減った」という反響や、駆けつけの前に状況が確認できるので、実際にケア時間の削減につながったというデータもあるとのことです。 取材記事はこちらから 業界初!予測型見守りシステム「Neos+Care(ネオスケア)」|ノーリツプレシジョン シルエット見守りセンサシルエット見守りセンサは、ベッド上の空間を検知する赤外線センサを使った見守りシステムです。センサによって起床やはみ出し、離床を検知して通報するだけでなく、端末を使って離れた場所からも様子が確認できるのが特徴です。開発メーカーによれば、シルエット画像を確認することで本当に今すぐ駆けつけが必要かどうか判断できるため、不要な駆けつけを減らすことが期待できるとのことです。取材記事はこちらから離床はもちろんはみ出しも!人の動きを検知する「シルエット見守りセンサ」|キング通信工業株式会社 OWLSIGHT (アウルサイト)福祉用OWLSIGHT (アウルサイト)福祉用は、非接触・無拘束のベッド見守りシステムです。ベッドの上に取りつけることで、ベッドの上での立ち上がりや離床などの動きの変化はもちろん、悶えや震え、呼吸などの非常に小さな動きも検出できます。開発メーカーによれば、のどや胸の小さな動きも捉えることができるため、見守りだけでなく、無呼吸症候群の方が寝ている間にちゃんと呼吸できているか、脳梗塞で胸の筋肉が麻痺してしまった方がリハビリでどれくらい改善されたか、などさまざまな活用シーンが考えられるとのことです。取材記事はこちらから 慶応大学発ベンチャーが開発!非接触の見守りシステム 「OWLSIGHT (アウルサイト)福祉用」|株式会社イデアクエスト 眠りSCAN眠りSCANは、マットレスの下に敷くだけでベッド上に居る人の状態をリアルタイムでモニタリングできる、非接触型の見守りシステムです。センサーは体動や呼吸・心拍などを検知します。それらの情報から睡眠・覚醒・起き上がり・離床などの状態を判断し、リアルタイムでモニター表示します。開発メーカーによれば、状況を見える化することはスタッフの精神的負担の軽減につながるだけでなく、状況に合わせて介護の優先順位をつけることで、目が覚めているときに介護するなどして入居者の睡眠を確保しつつ、巡視業務にもメリハリをつけることができるとのことです。実際に眠りSCANを全床に設置している施設からは、「夜間の見守りが楽になった」という声があがっていると言います。取材記事はこちらから ケアプラン改善にも!次世代マット式見守りシステム「眠りSCAN」|パラマウントベッド株式会社 Mi-Ru(ミール)Mi-Ru(ミール)は、カメラを使ったポール状の介護施設向け見守りシステムです。カメラの映像から利用者の動きを判断し、危険と思われる動きを察知したら端末で通知します。遠隔でも映像を確認できますが、任意でモザイク映像に切り替えることができるので、プライバシーにも配慮されているといえます。特徴は遠隔から声がけができること。「今行きますね」などの声かけで、駆けつけるまでに利用者に安心感を与えることができます。取材記事はこちらから 遠隔で声掛けもできる!ポール状施設向け見守りシステム  Mi-Ru(ミール)|ワイエイシイエレックス株式会社 見守りケアシステム M-2画像: フランスベッド株式会社HP より「見守りケアシステム M-2」は、ベッド利用者の離床動作を検知して通知するベッド内蔵型の見守りロボットです。起き上がりや離床を通知するだけでなく、身体を動かすことが困難な方の体重を毎日測ることができる「体重測定機能」や、介助時や食事の際にセンサー機能を一時停止しても再度検知を開始する「自動見守り再開機能」を標準搭載している点が特徴です。オプションで、行動特性の記録ができる「ログ解析ソフト」機能もあります。  見守りロボットのこれまでとこれから上で紹介した以外にも、さまざまな見守りロボットがこれまでに開発されてきました。経済産業省の事業である「ロボット介護機器開発・導入促進事業」では、他分野と比較してもっとも多い35社が見守りロボットの開発に乗り出しています。 介護ロボットONLINEが独自に行った調査 では、半数を超える61.5%の人が 「今後導入する予定のある介護ロボット」に「見守り支援型」をあげており、介護施設も高い関心を寄せていることが分かりました。さらに 介護ロボットONLINE独自の取材 では、すでに「シルエット見守りセンサ」を導入している施設の声として「駆けつけの回数が減っていると思う」という聞き取りも行っています。見守りロボットの有用性は、すこしずつ証明されてきていると言えるでしょう。今後の社会保障審議会に注目!ロボットスーツや大型の移乗支援ロボットに比べて安価な商品も多く、安全面でも不安が少ない見守りロボットは、介護ロボットとしては導入へのハードルも低いといえます。厚生労働省の実証研究では、見守りロボットによって介護職員の負担や介護事故が減少するという結果もでています。見守りロボット導入に加算がつけば、費用対効果の面でも期待が高まるでしょう。介護ロボットONLINEでは、今後も見守りロボットの取材を積極的に行っていきます。 <参考資料> 厚生労働省(2017年)第153回社会保障審議会介護給付費分科会資料 厚生労働省「介護ロボットの導入支援及び導入効果実証研究事業」公募開始 (2017/12/13)

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