最悪の場合は退職も!気をつけたい介護の腰痛~原因・対策・予防・助成金~

最悪の場合は退職も!気をつけたい介護の腰痛~原因・対策・予防・助成金~

腰痛は日本の国民病と言っても過言ではありません。厚生労働省のデータによると、なんと日本人の4人に1人が腰痛を抱えていることが分かっています。とくに利用者を抱きかかえて移動させたり、中腰での作業が多い介護業界は、腰痛に悩まされる人が後を立ちません。腰痛が悪化した結果、退職せざるを得ない人もいます。

ここでは介護業界で働く人に向けて、介護職につきまとう腰痛の原因や対処方法をまとめました。さらに介護施設を運営する方に向けて、腰痛対策の重要性とそのためにできることをまとめました。

介護職における腰痛の現状

介護職腰痛の現状

※画像をクリックすると拡大できます。

4日以上の休業を要する職業病の約6割が腰痛だということをご存知でしたか?介護職の腰痛による休業はこの10年で約2.7倍にまで増加しており、介護業界で働く人、介護施設を運営する人双方にとって、大きな問題となっています。

介護業界における腰痛の原因

厚生労働省によれば、腰痛の発生要因は動作要因、環境要因、個人的要因などさまざまで、多くの場合いくつかの要因が複合的に関与しています。介護の現場では、下記のような動作や環境が、腰痛を引き起こしていると考えられます。

  • 人力による人の抱上げ作業
  • 前かがみ・中腰での作業

ちなみに、国により若干異なりますが、欧米諸国では1人で持ち上げることのできる重量を約 25kg までと制限しています。それ以上の重量のあるものや人を繰り返し持ち上げたり抱えあげたりする介護現場で働く人は、腰痛リスクが高いと言えるでしょう。

腰痛にならないためには?予防や対処方法

腰痛は単に痛いという身体的苦痛にとどまらず、痛みや不自由さから来る精神的なリスクや、休業や通院・入院費といった経済的負担にもつながる問題です。また、腰痛は一度なってしまうと治りづらい病気でもあり、完治するのはたったの10%とも言われています。

よって、腰痛になる前の予防が非常に重要です。ここでは、腰痛予防のポイントをまとめました。

移乗介助時の対策ポイント

厚生労働省は、特に腰痛を引き起こす原因となる移乗介助において、次のような対策を挙げています。

  • 利用者の残存能力を活かした介助方法を用いる。
  • スライディングボードやスライディングシートを活用。
  • 一人で抱え上げない。複数化および福祉機器(リフト、スライディングシートなど)を活用。

移乗介助に関するロボット一覧はこちら→「移乗介助ロボット一覧」

入浴介助時の対策ポイント

また、腰痛発生状況がもっとも高い入浴介助中の対策ポイントとして、下記を挙げています。

  • 滑り止め対策(滑りにくい作業靴を履く、滑り止めマット)
  • 水分補給をこまめに。
  • 冷え対策(水気・汗を拭き取る、着替える、水をはじくエプロンを着用して作業、など)
  • 入浴介助を担当する回数や時間を調整する。

その他の予防・対処方法

その他、腰痛を防ぐための方法としては、腰部保護ベルトやコルセットの使用、腰痛予防体操、ボディメカニクスの応用などがあります。

参考:辛い介護の腰痛をやわらげる身体介助のちょっとしたコツ|腰痛の予防に良いグッズ

参考:ボディメカニクスを知ろう!~腰への負担が軽くなる介助のテクニック~

腰痛対策としての介護ロボットって?

腰痛の原因となる移乗介助を減らす、無くすといった根本的解決のためには、福祉用具を変えるのも一つの手です。今回は、腰痛予防につながる次世代福祉用具、介護ロボットをご紹介します。

マッスルスーツ|株式会社イノフィス

マッスルスーツ

マッスルスーツとは、人工筋肉を使った腰痛予防のための装着型介護ロボットです。介助者がマッスルスーツを身につけることで、荷物を持ち上げる際の腰に対する負担が35%軽減、荷物を降ろす時の負担に関しては、約6割も軽減されるという測定結果も出ています。

マッスルスーツ

ROBOHELPER SASUKE(ロボヘルパーサスケ)

「抱き上げ式」で移乗介助をアシストするロボット介護機器です。専用シートを敷き込み、その両端にSASUKEのアームを通して、シート全面で抱き上げます。また、レバー操作で、座位から臥位まで自由な姿勢を保持する事ができるので、標準型車いすやリクライニング車いすに幅広く対応できます。シンプルな操作と安定した乗り心地で、介護をうける方・おこなう方の双方に、やさしさと安心をお届けできるます。

ROBOHELPER SASUKE(ロボヘルパーサスケ)

HAL®介護支援用(腰タイプ)|CYBERDYNE株式会社

HAL®介護支援用(腰タイプ)は、人が体を動かすときに脳から筋肉へ送られる信号を読み取り、腰にかかる負荷を軽減する装着型介護ロボットです。2016年2月時点で国内の75施設

で利用されています。HAL-CB02モデルは防水機能も装備されているため、腰痛発生率がもっとも高い入浴介助中でも使うことができます。

スマートスーツ|株式会社スマートサポート

スマートスーツは、「軽労化」をコンセプトに、中腰姿勢の維持や重量物の持ち上げによる疲労や負担を軽減するための装着型ロボットです。介護だけでなく、農作業や配送作業などにも広く使われています。負担軽減効果に加えて、お腹を引き締めるコルセット効果があるため、腰痛を発症しにくい”お腹に力を入れて固くした状態”をアシストしてくれます。

腰痛対策のための助成金制度

腰痛は、しばしば休業や休職、ひいては退職をともなう恐れもあるため、介護従事者はもちろん、介護施設運営者、経営者にとっても大きな問題です。ただでさえ介護人材の確保が困難になっている昨今、腰痛による休職者や退職者を減らすのは、円滑な運営上不可欠になってくるでしょう。

腰痛を防ぐという職場環境の改善は、従業員の定着率を向上させ、労災を防ぎ、企業イメージをアップするための重要な経営課題です。政府も、腰痛による休職者や退職者を減らすために、助成金制度を設けています。

職場定着支援助成金

職場定着支援助成金とは

介護労働者の身体的負担を軽減するために導入した介護福祉機器によって労働環境の改善がみられた場合に、機器導入費用などを助成する

機器導入助成

介護福祉機器の導入費用の25%(上限150万円)

労働環境の改善がみられた場合

目標達成助成

介護福祉機器の導入費用の20%
生産性要件を 満たした場合は35%(上限150万円)

従業員の離 職率の低下が図られた場合

上記の介護ロボットも、こちらの助成金の対象になる可能性があります。

欧米での腰痛対策事情は?

海外でも、介護業務による腰痛は問題とされてきました。イギリスやオーストラリアでは、いち早く国をあげての腰痛対策に取り組んでいます。そのひとつが、ノーリフティングポリシーです。

ノーリフティングポリシー

「持ち上げない方針」のこと。1993年にイギリス看護協会が「人力のみで患者を持ち上げることを避ける」ことを新しく取り入れ、95年に「ノーリフティングポリシー(持上げない方針)」を発表された。

またオーストラリアでは、1998年に「押さない・引かない・持上げない・ねじらない・運ばない」という、介助時には福祉機器などを利用し、人力のみでの移乗介助や移動を制限することを発表しました。

その結果、オーストラリアの厚生労働省は、適切にノーリフトプログラムが実施されたことによって、調査した施設では負傷が48%減少し、損傷によって失われるお金は74%減り、労働者の苦情処理にかかるコストも54%削減できたと発表しています。

まとめ

腰痛は、単に痛いというだけにとどまらず、精神的リスクや経済的負担という問題にもつながります。例えば腰痛の治療費や入院費として、平均13万円かかるとされています。また治すためには、約22日間の在院が必要です。介護従事者一人ひとりが気をつけるのはもちろんですが、介護ロボットの導入といった施設レベルでの取り組みも不可欠となってくるでしょう。