AIとITの利活用で価値創造と事業開発促進をみんなで考える

AIとITの利活用で価値創造と事業開発促進をみんなで考える

あなたは介護の現場でのAIやITの活用について、どのように考えますか?介護スタッフの人材不足といわれている現在。まだ自分の周りでは、AIやITの活用は始まっていなくてもいつかは考えなくてはいけないときがくるでしょう。 

令和2年2月13日(木)、東京ビッグサイト第3回超高齢社会のまちづくり展(CareCITY2020)において、「当事者視点の介護機器システム高度化に向けた事例紹介とエビデンスづくりのワークショップ」 ~AIとITの利活用で価値創造と事業開発促進をみんなで考えます~ というイベントが開催されました。

みんなの認知症情報学会主催イベント

※画像をクリックすると拡大します。

「当事者視点の介護機器システム高度化に向けた事例紹介とエビデンスづくりのワークショップ」の主催は、「一般社団法人みんなの認知症情報学会(理事長 竹林洋一 静岡大学創造科学技術大学院特任教授 以下同学会)以下同学会」、共催は人工知能学会・コモンセンス知識と情動研究会、協賛は情報処理学会・高齢社会デザイン研究会。

同学会はAI×認知症やAI×介護という研究領域において、認知症を人間の一個性と捉え認知症当事者の視点を重視する市民情報学(Citizen Informatics)を提唱する学会であり、イベントは内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)  第2期/ビックデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」の委託事業である「自立共生支援AIの研究開発と社会実装」の一環として開催されました。

イベントでは、第1部で学術会員と賛助会員(企業・団体会員)が学会活動とリンクする介護機器関連事例を数例紹介し、第2部で学術会員と賛助会員(企業・団体会員)と市民会員が混然一体となり協働して活発なグループワークを展開しました。

今回は、同学会の特徴的な活動手法とい言える第2部のグループワークに焦点をあて、詳細にレポートします。

イベント参加者が考える今後の介護機器システムの高度化について

グループの構成とグループワークの流れ

まずはグループワークの構成と流れをお伝えします。

<グループの構成>

7名程度で構成されたグループが7つ、1グループに1名のファシリテーターが配置されていました。また7グループは学術会員と賛助会員(企業・団体会員)と市民会員の比率に偏りがないよう、メンバー構成を事前に決定しています。

<グループワークの流れ>

5つのグループがそれぞれ以下の流れでグループワークを展開しました。

① 認知症当事者の視点に立ちあるべき姿と現状を明らかにする。 

② あるべき姿と現状のギャップから問題を抽出する。 

③ 問題を踏まえて目標(ゴール)を設定する。 

④ 目標(ゴール)を実現するための課題を抽出する。 

⑤ 目標(ゴール)を実現するための課題の中から、AIやITの技術を活用することにより解決できそうな方策をまとめる。

一旦グループから事務局にすべての課題が集約され、事務局はそれぞれの課題ごとに最適なメンバー構成になるよう、希望や専門を考慮してグループを再編し課題を振り分けました。

⑥ 再編されたグループごとに振り分けられた課題に対して、AIやITの技術の研究開発について検討しました。

クループワーク参加者の声

同学会賛助会員で参加者の方々から、今回のグループワークについて話を伺いました。

“してあげたい”ではなく当事者視点で開発する必要性

『みんなの認知症情報学会のグループワークの特徴は、まず何より認知症当事者の視点であること、そして常にあるべき姿を想定して進行していくことです。とかくグループワークやセッションでは、してあげたいとかやってあげたいとかいう、支援ありきサービスありきの視点になりがちです。

しかし今回のグループワークでは、目指すべき方向や目標を明確にイメージし、そこに至るシナリオがあるという点が圧倒的な存在感を放っていました。認知症当事者の安心や安全、住みやすい生活を具体的にイメージできている、かつ共通の認識として参加者が共有しているので、自由な意見が飛び出しながらも方向性が定まっており、ブレーンストーミングの極意を垣間見たグループワークとなりました。

またよいもの作りました、自信があります、だから買ってくださいと売り込む商材が、認知症当事者にとって望まれるものである確率がいかに低いか、認知症当事者の視点で開発することの重要性を肌で感じた瞬間でした。』

AIはあくまで後方支援、最後の判断はその人らしさを大切に

『認知症の人は認知機能の低下から、言葉が出てこない、確かさが曖昧になる、不安が募るなどの状態になり、なんで解かってもらえないの!と苛立つことも多くなると言われています。このなんで!の瞬間に身体と心、脳の中で起こっていることを解析し、AIの力でサポートすることはできないか?という内容で参加者の意見が活発に交わされました。

未来の介護に寄せる期待、認知症の人や家族に対する支援の大切さについて多くの意見が出る中で、AIはあくまで後方支援、最後の判断は人間そのものの、その人らしさを大切にしたいという意見が印象的でした。認知症になっても見える景色は同じ。綺麗と感じること、美味しいと感じること、ワクワクやドキドキすること、その人の多様な生活を支えるAI研究には、あらゆる立場や専門を超えて共に学び、つなぎ、知を創り出すことが重要であると思います。』

認知症当事者の視点からあがったAIやITの力を借りたい課題とは?

これら参加者が属したグループでは、認知症当事者の視点から(具体的な日常生活上の困り事から)、以下のような課題抽出が行われたとのことです。

・課題=待ち合わせ時刻に間に合うようにTODOがわかる ⇒ 時間逆算によるアシスト機能

・課題=外出準備ができる ⇒ 外出準備アシスト機能

・課題=靴を履いて、玄関のドアを開けて、戸締りができる ⇒ 靴を履く、戸締りアシスト機能

・課題=公共交通機関を利用し待ち合わせ場所まで行く ⇒ 公共交通機関利用アシスト機能

一連のワークを経て、AIやITの具体的技術の研究開発が検討されたところ、以下5つの領域で事業開発促進が望まれるとの集約結果になりました。

Ⅰ. 外出支援 (ナビゲーションシステム・買い物)

Ⅱ. 金銭管理 (パーソナルデータベース)

Ⅲ. 五感センシング

Ⅳ. おすそわけマッチングサービス (本人のやりたいこと支援システム)

Ⅴ. 聴覚支援システム

まとめ

介護機器システムの開発や高度化はそれに関係する企業界のみならず、学術界からもさまざまな知見・構想が提供され企業界と学術界の協力体制のもと、新たな価値ある製品が市場に登場しつつあります。

今回は特に認知症関連の介護機器システムの研究において、同学会会員の研究者・企業・団体・市民が混然一体になり取り組むグループワークの様子をレポートしました。

特筆すべきは、同学会の提唱する「市民情報学(Citizen Informatics)」が認知症当事者の視点を重視する点、具体的な学会活動を推進するにあたり認知症当事者を含む市民や企業・団体など研究者以外の会員も重要な立場にある点、つまりまさにその名の通り "みんなの認知症情報学会" である点でしょう。このような同学会の取り組みが、新たな介護機器システムの開発や高度化に繋がる日も近いと思われました。

尚、同学会は賛助会員として企業・団体が新らたに学会の仲間入りすることを歓迎するとのことでした。

【取材協力】

一般社団法人みんなの認知症情報学会

・竹林洋一 氏 (理事長 / 静岡大学創造科学技術大学院特任教授)

・桐山伸也 氏 (理事 / 静岡大学ケア情報学研究所所長)

・青野桂子 氏 (賛助会員 / 青野桂子事務所代表)

学会ホームページ : https://cihcd.jp 

学会連絡先 : contact@cihcd.jp

【執筆】

・中原真(青野桂子事務所 事務長/シニアコンサルタント)

米国系ISO審査登録機関Perry Johnson Registrars東京支店にて主任審査員資格取得後、サービス領域審査部門マネージャー。英国系ISO審査登録機関 National Quality  Assurance日本法人に移籍し取締役審査本部長。特に医療/介護福祉業界の審査を多数経験し、同業界のマネジメントシステムの構築・運用に精通。同業界のサービスの質の保証・マネジメントが「ヒトの問題」に帰着することに着目し、医療法人康仁会 事務長補佐、および社会福祉法人芳春かい 人事企画部長を経て、現在は同業界で介護教育のコンサルティングにあたる青野桂子事務所に所属。