Pepperくんが施設内を一人で見回り!?実証実験を見に行ってきた

2018年3月28日、あのPepperに一人で介護施設内を見回りさせる実証実験が行われました。
実証実験の舞台は、「本気で親を入れたい」最高の老人ホーム 2017関東ベスト100 第1位にも選ばれた有料老人ホーム「フェリエ・ドゥ 横浜鴨居」。Pepperを動かすアプリを開発したのは、ロボットの販売やアプリ開発を展開しているX-mov Japan株式会社です。
今回は、自律走行しながら施設の見回りをするPepperを、介護ロボットONLINE編集部が実際に見てきました!代表の長安成暉氏のインタビューを交えながら、実証実験の様子をレポートします。
実証実験の様子をレポート
X-mov Japanが開発しているのは、SLAMという技術を使ってPepperを自律走行させ、夜間帯の巡回業務を自動で行うロボアプリです。自律走行のほかにも、Pepperに搭載されているカメラを通してリアルタイムで映像を配信したり、見回り中に出会った人を顔認識してスタッフに通知を行うと同時に、その人に声かけするなどの機能が備えられています。
実験場所 | フィリエ・ドゥ 横浜鴨居(介護付有料老人ホーム) ※「本気で親を入れたい」最高の老人ホーム 2017関東ベスト100 第1位 https://kaigo.news-postseven.com/364 |
検証内容 | 1.SLAM (自律走行)を使った夜間の巡回業務 2.リアルタイム映像配信 3.顔認識機能 |
さっそく、Pepperの自動巡回の様子を見てみましょう!
事前にフロアマップをインプット。
自律走行させる前に、Pepperにフロアの地図や目的地をインプットします。こうすることで、人による操作なしで自動的に施設内を巡回してくれます。
スタートボタンを押すと自律走行が開始しました。巡回中は、胸元のタブレットに「散歩中」と表示されています。途中で人に出会うと、「こんばんは」と声をかけていました。この際に顔認識して相手を特定し、スタッフへ遭遇した時間と合わせてメール通知します。
自動で動くPepper。移動速度はゆっくりで、動いている間の音も気にならない。
廊下をひとりでに進みます。つきあたりまで行ったら、くるりと回転して戻ってきました。移動中は、Pepperに搭載されているカメラからリアルタイムで映像が配信されます。
Pepperの目線をリアルタイムで配信。スタッフは座りながらフロア全体が見守れる。
編集部はこう思った
今回Pepperが見回りしたのは施設内の廊下だけで、居室の中にまでは入っていきませんでした。そのため、居室内の様子を確認する巡回の代わりにはなりません。しかしPepperが自動で廊下を巡回することで、いち早くひとり歩きしている入居者を発見できたり、スタッフの安心感につながったりすることが期待できます。
代表の長安氏にインタビュー![]()
現役大学生でもあるX-mov Japan株式会社代表取締役社長兼CEOの長安成暉氏とPepper。
Pepperの介護アプリといえば、いっしょに体操をやクイズをしたりと、レクリエーション目的のものが多い印象があります。そんななか「Pepperに夜間巡回させる」というユニークな発想でアプリを開発したのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか?X-mov Japan株式会社の代表取締役社長兼CEOである長安成暉氏に話を聞いてみました。
徹底した現場主義で真の課題解決をめざす
ーーーなぜ、Pepperを自律走行させて夜間の巡回をさせようと思いついたのでしょうか?
弊社は、Pepperの自律走行型アプリケーションの開発や米物流運搬ロボットの販売等を行ってきましたが、「Pepperに夜間巡回させる」というアイディアがもともとあったわけではありません。
自律走行に使われているSLAMという技術を用いて、介護業界の課題を真の意味で解決するためには、アイディアありきではなく現場を徹底的に知る必要があると感じていたんです。そのためにまず、約2週間かけて3つの介護施設で張り込み調査を行いました。
そこで見えてきた課題や現場の方の生の声から、「Pepperが代わりに夜間巡回を行えるアプリを開発しよう」と決めたんです。
Pepperに夜間巡回させる意味
ーーー2週間の調査で、どのようなことがわかりましたか?
現場を見て痛感したのは、ひとつひとつの業務にかかる時間は短くても、細かい業務が積み重なってスタッフの方を圧迫しているということです。
体位変換に2分、移乗介助に3分、といったことを入居者の方全員に繰り返しているうちに、あっという間に時間がたってしまう。そんな現状を見ながら、スタッフの方の負担を大幅に減らすには、細々した特定の業務をロボットに代替させるだけではあまり意味がないのではないかと思うようになりました。
また3施設それぞれで、ニーズやオペレーションが大きく異なることもわかりました。すべての施設に共通していて、かつロボットにサポートしてもらうと負担が大幅に減るのは何か、と考えたときに「夜間の見回り業務」に思い至ったのです。
また、Pepperと夜間帯の相性が良いというのもポイントでした。Pepperは太陽光の反射などでうまく動かないことがあるので、夜間帯であればよりスムーズな制御が可能なのです。
ーーー今回の実証実験で使われているのはまだプロトタイプということですが、今後はどのような改良を重ねていく予定ですか?
具体的な改良点は実証実験の結果を見てから検討を重ねる予定ですが、操作性や利便性はリリースまでにレベルアップさせていきたいですね。スタッフの方はスタートボタンを押すだけでOKというところまでもっていければと思っています。
また、現時点では入居者の方に遭遇した際の通知がメールで行われていますが、それをプッシュ通知にするなどよりわかりやすくお知らせする方法にしていく予定です。