「介護は誰にでもできる仕事」!?ロボットに沸く今、改めて考えたい介護職の将来性

介護ロボットONLINE編集部介護ロボットONLINE編集部

作成日2017/12/26 更新日2018/01/1512,276views

2018年1月28日に開催を控える介護福祉士国家試験。第30回目となる今回の申込者数は、昨年の2割増である約9.6万人にのぼりました。

介護福祉士は数ある介護系資格のなかでも唯一の国家資格として知られており、合格のためには幅広い知識を学ぶ必要があります。介護福祉士はいわば介護の専門家ですが、介護職の専門性についてはたびたび議論されてきました。

昨今では、ホリエモンこと堀江貴文氏が自身のTwitterにて「 介護は誰にでもできる仕事 」と発言し議論を巻き起こす一方で、政府は「経験・技能のある職員」を中心に8万円相当の処遇改善を図ると発表し、専門性のある介護人材を高く評価しようという動きもあります。

介護の仕事は、果たして本当に「誰にでもできる」のでしょうか?また介護の専門性は、いったいどこにあるのでしょうか?

介護の専門性に関する調査をひもときつつ、今後の介護職に求められる専門性について考えてみました。

介護の専門性にたいするさまざまな声


自身も服役中に介護を経験したことのある堀江氏による「 介護は誰にでもできる仕事 」という発言は、多くの人にさまざまな反応を呼び起こしました。

介護を「専門的な仕事ではない」と考える人も少なくない一方で、「専門知識や技術が求められる専門職である」と考える人も多くいます。


こうした議論が生じる原因のひとつに、専門性がオープンでないことがあげられるでしょう。そこで厚生労働省は、介護施設や事業所が「専門性が必要」と認識している業務を明らかにする調査を行いました。次章では、その内容をまとめていきます。

報告書からわかる、施設が求める介護の専門性


厚生労働省は、「 介護人材の類型化・機能分化に関する調査研究事業 」にて、介護施設がどのような業務を「専門性が高い」と認識しているのかを調査しました。

調査にあたって、介護人材は専門知識の度合いによって下記の5段階に分類されます。

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介護業務は、下記の7つに分類されます。

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各業務の専門性に対する施設の認識は、「各業務をするのに最適な人材は、5段階のうちどの人材か」を答えるというかたちで調査されました。

たとえば、「a.身体介護の実施」に最適な人材として「4.より専門性の高い知識、技術を有する介護福祉士等」を選んだ場合、「a.身体介護の実施」には高い専門性が必要だと認識しているといえます。

生活援助は専門性が低い?

1~3の業務を比較した場合、施設・事業所は「生活援助」<「身体介護」<「特定ケア」の順に専門性が高くなると認識していることが分かりました。

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とくに老健では、約半数の施設が「知識、技術をそれほど有しない者」が「生活援助」に適任であると認識していることから、「生活援助には高い専門性は必要ない」という考えが読みとれます。

生活援助ヘルパーを新設する動きも

こうした調査に合わせて、生活援助を行うヘルパーの基準を緩めようという動きが出はじめています。

厚生労働省は、短期間の研修で生活援助をできるようにするヘルパーの基準緩和を提案しました。間口を広げて人材を確保する一方で、生活援助の基本報酬を下げる狙いがあると考えられます。

この提案に対して、日本ホームヘルパー協会は強い反発を示しました。「生活援助は誰にでもできる仕事ではない」と主張したうえで、生活援助は「単なる家事代行サービスではなく、重度化を防いでいる」と訴えています。

生活援助のなかで利用者の状況を把握し、コミュニケーションを通して「日々の暮らしを支えている」という主張は、「生活援助には専門性が必要なく、誰にでもできる仕事だ」という見解だけでなく、「生活援助」をその他の業務と切り離して考えること自体の是非を問うことにもつながるといえるでしょう。

専門性が高いと考えられている業務は?

逆に、専門性が高いと認識されている業務はどれなのでしょうか?

介護人材の類型化・機能分化に関する調査研究事業報告書によれば、「アセスメントの実施」「介護計画の作成」は、「介護福祉士」および「より専門性の高い知識、技術を有する介護福祉士等」が適任だと認識している施設の割合が高いことがわかりました。

また「情報収集」はもちろん、それをふまえた「ケアの提案」も「介護福祉士」および「より専門性の高い知識、技術を有する介護福祉士等」が適任だと認識しています。

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つまり「介護計画」や「情報連携」などの業務には、高度な専門性が必要だと考えているということです。

地域包括ケアで、医療従事者とのやりとりが増える

「情報連携」のなかでも、今後とくに増えていくと考えられるのが「外部の機関や事業所からの情報収集」「外部の機関等に対するより良いケアの方法の提案」です。

その背景に、地域包括ケアシステムの推進があります。地域包括ケアシステムの構築には、医療と介護の連携が不可欠です。高齢者が住みなれた地域で生活をしていくために、医療スタッフと介護スタッフはともに意見を出し合ってケアの方針を決めていく必要があるからです。

つまり、介護福祉士は医療スタッフと対等に議論できる高度な知識と、外部機関とやりとりする高いコミュニケーション能力が求められることになるのです。

「生活援助」のような専門性が低いと思われている業務を介護福祉士以外に任せようという動きがある一方で、介護福祉士にはより専門性の高い業務を求められていくといえるでしょう。

「介護ロボットが人の代わりに介護する」にひそむ誤解


専門性の低い業務を介護士以外に任せようとする動きの極点に、介護ロボットがあります。「人間の代わりにロボットが介護してくれる」という介護ロボットの一般的なイメージがそれを表しているといえるでしょう。

しかし現在の介護ロボットは、「人間の代わりに介護する」というレベルには達していません。実際には補助的な役割を担っているだけです。

すでにロボット掃除機が一般家庭にも普及しつつありますが、あくまで「掃除」という作業の一部分をカバーするにとどまります。ホームヘルパーが利用者の暮らしやすさを考えながら生活の基盤をととのえ、部屋の乱雑さから心身状態を把握し、それに合った対応をするのと比較すると、「介護」というには程遠いことがわかります。

こうした介護の奥深さに、介護ロボットがこれからどれほど対応できるようになるかは疑問ですが、一見「作業」のように見える掃除も、利用者の状態や症状を把握するために不可欠な「専門業務」となりうることを忘れてはなりません。

介護福祉士の将来性は暗くない

たびたび議論される「介護の専門性」。政府は、超高齢社会の到来にともなう介護の人手不足や財源不足から、介護人材を機能分化してより効率よく介護できるようにしようと模索しています。

しかし介護における各業務を切り離して、それぞれの専門性をはかることがはたして正しいといえるのかという疑問は残ります。「生活援助」と「情報収集」が地続きにあるとすれば、「生活援助」をロボットや介護関係者以外が行うことでよりよい介護が妨げられる危険性もでてくるからです。

いずれにせよ、介護福祉士が今後ますます高い専門性を求められるのは間違いありません。専門性には、医療従事者と対等に話せる介護知識や、介護ロボットを使いこなす技術力などが含まれるでしょう。

同時に、高い専門性に見合った待遇が整備されていく必要もあります。実際、政府は「経験・技能のある職員」を中心に8万円相当の処遇改善を図ると発表しました。

介護福祉士の将来性は、必ずしも暗いわけではありません。少しずつではありますが、その専門性が認められてきているといえます。介護業界に対する誤解を解いてイメージアップを図るためには、介護職からの情報発信がますます重要になってくるでしょう。

<参考資料>
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(2016年3月)「 介護人材の類型化・機能分化に関する調査研究事業報告書
厚生労働省(2017年9月13日)「 第147回社会保障審議会介護給付費分科会資料 」 



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