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どっちを優先すべき?介護職員の処遇改善 VS 介護ロボット導入加算

介護ロボットONLINE編集部介護ロボットONLINE編集部

作成日2017/10/16 更新日2018/03/2714,006views


あなたは、介護職員の処遇改善介護ロボット導入加算、どちらがより大事だと思いますか?  

平成30年度、3年ぶりとなる介護報酬の改定が行われます。改定に向けて、すでにさまざまな議論が繰り広げられています。

そのなかでもとくに議論の中心となっているのが、介護の人材不足問題です。人材不足解決のために今、2つの対策案が検討されています。「人材確保」と「業務効率化」です。

現在、前者に対しては職員の処遇改善加算が、後者に対しては介護ロボット含むICT導入加算が検討されています。

しかしネット上では、「介護ロボットに加算するくらいなら、職員の給料を上げたほうが良い」という声も少なくありません。

ここでは、「介護職員の処遇改善 VS 介護ロボット導入加算、どちらを優先すべきなのか?」について考えてみます!

処遇改善加算について

数字で見る介護職の“悪待遇”

介護の人材不足の大きな原因として、「介護職の待遇の悪さ」があります。

介護の仕事は、昼も夜も関係ない重労働で、かつ人の命を預かる重い責任をともないます。それにもかかわらず、介護職の給料は安いと言われています。介護職員の平均年齢は40歳前後、平均年収は約300万円です。

介護職員の平均年齢は40歳前後、平均年収は約300万円


平均年齢・勤続年数に違いがあり単純な比較はできないものの、介護職の平均年収は他産業の平均年収を100万円以上も下回っているとも言われています(※1)。

このような状態では、介護職につきたい、介護職を続けたいと希望している人々まで辞めていってしまいます。実際に、介護職の平均勤続年数は平均5.5年で、他の産業と比較しても短い傾向にあります(※2)。また都内の特別養護老人ホームでは、独自の基準を定めている施設の半数以上が職員の定員割れをおこしているという調査結果も出ています(※3)。

介護職の平均勤続年数は平均5.5年

つまり介護人材の確保には、給与面での待遇改善が不可欠なのです。


※1 NHK「週刊ニュース 深読み 介護報酬削減 誰が担う?どう担う??」(2015年1月17日放送)
※2 第1回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「 介護人材の確保について 」(2014年10月27日)
※3 東京都社会福祉協議会「特養における利用率及び介護職員充足状況に関する実態調査(概要) 」(2017年3月15日)

処遇改善加算の実態と問題点

一般の民間企業であれば、会社の利益を出せば社員の給料を上げることができます。しかし、介護福祉施設ではそう簡単には行きません。なぜなら、介護施設の運営は介護報酬によって成り立っているからです。

介護報酬の重要性


介護報酬とは、介護サービス事業者に対して支払われるサービス費用のことです。介護施設の経営者は、介護報酬を上手くやりくりして運営しているのです。

介護職員の給料も介護報酬から支払われています。人件費に充てられる介護報酬は全体の約6割と言われています。よって介護報酬が減らされれば、介護施設の経営が立ち行かなくなったり介護職員の給料が減らされてしまったりする恐れがあるのです。

これまでの処遇改善への取り組み

これまでの介護職員の処遇改善への取り組み

これまで、介護職員の処遇改善に向けてさまざまな対応が取られてきました。例えば、介護職員処遇改善交付金という国の制度や介護報酬の介護職員処遇改善加算というしくみがあります。

平成27年度の改定では月額1万円から1万3千円程度の賃金アップを、平成29年度の臨時改定では月額平均1万円程度の賃金アップを見込んだ報酬加算が行われました。

処遇改善で、本当に給料は上がったのか?

そうなると気になるのが、「実際に給料はあがったのか?」という点ですよね。平成29年度の調査結果はまだ公表されていないので、平成28年度の介護従事者処遇状況等調査結果を見てみましょう。

調査結果(※4)によれば、介護職員 の平均給与額は約1万弱上昇しています。

平成28年度の介護従事者処遇状況等調査結果

その内訳は、基本給が2,790円増、手当が2560円増、賞与などの一時金が4,190円増となっています。

処遇改善加算の問題点とは?

実際に介護職員の月給を1万円アップさせた処遇改善加算。ただしこれには問題点もあります。

ひとつ目は、介護現場で働くすべての人が対象というわけではないという点です。

介護施設には常勤の介護職員の他に、看護師や調理師、生活相談員なども働いていますが、そうした人々は処遇改善の対象外となります。対象なのは実際に介護現場で働く介護職員(常勤・パート含め)だけなのです。

処遇改善の対象外リスト

・ケアマネージャー
・生活相談員
・看護師
・調理師
・介護事務職員

など

ある調査によれば、生活相談員・支援相談員や介護支援専門員の給与は一年前より 下がっていることが明らかになっています(※4 平成28年9月時点)。

2つ目は、処遇改善加算を取得していない施設も存在するという点です。平成28年度の調査では、1割の介護施設が加算を取得していないと回答しています。その理由として、「事務作業が煩雑」が一番多く挙げられています。

さらに平成29年度の処遇改善加算拡充(1万円相当アップ)を受ける為には、【キャリアパスⅢ】の加算要件を満たしていなければいけません。

加算取得のためにはある程度の企業努力が必要ですが、それすらできない介護施設もあるということです。

3つ目は、処遇改善加算によって月給が上がっても、これまで出されていた賞与などのボーナスがカットされる可能性があるという点です。

実は、処遇改善加算の分配方法は施設や事業所の管理者に委ねられています。全体の介護報酬が下がっている今、 処遇改善加算がされても、結局はどこかで帳尻を合わせなくてはいけないということで、そうした処置をする施設も出てくる可能性は否定できないのです。

※4 平成28年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要

ネットの声は?

ネットの声を見てみると、処遇改善加算で月給や手当が増えて喜んでいる声よりも、「1~2万円上がったところで変わらない」「給料を上げるよりも残業や休日出勤の削減を」という声が目立ちました。また懸念されていたとおり、「ボーナスと相殺されて恩恵を受けられていない!」という声も少なくありません。

平均としては、賃金アップにつながっている「処遇改善加算」。しかし実情は、さまざまな問題が隠されているようです。



処遇改善加算まとめ

(1)介護職の悪待遇を是正しなければ人手不足は解決しない。
(2)これまでにあった2度の改定では、それぞれ1万円程度賃金アップした。
(3)しかし、処遇改善加算の恩恵にあずかれない人々も存在する。
(4)ネットでは、処遇改善加算の問題点を指摘する声も見られた。


介護ロボット導入加算について

「介護ロボットを導入した施設には、介護報酬を加算する」――こう聞いて、あなたはどう思いますか?ここからは介護ロボット導入加算についてまとめます。

なぜ介護ロボット?



介護ロボット導入加算の背景

介護ロボット導入加算は、政府の方針を決める「未来投資会議」という会議で安倍首相が言明したのをきっかけに本格的に議論されるようになりました。

年々膨張する社会保障費を抑えたい政府は、介護ロボットやICT機器によって介護の業務を効率化するとともに、介護負担を軽減して介護職員の定着率を上げたい考えです。

それに加えて、実は経済産業の側面からも介護ロボットは期待されています。経済産業省は、介護ロボットを世界で勝てる“日本の新しい産業”として育てていきたいと考えているのです。

そのため経済産業省は企業に対して、介護ロボットの開発費用を最大1億円補助する事業を5年ほど行っています。

介護ロボットのメリットと問題点

介護ロボットを導入することでさまざまなメリットがあると考えられています。 しかし、本当にそうしたメリットが受けられるのかどうかに関して、あまり検証されていない現状があります。

介護ロボットのメリット



介護ロボット導入のもっとも大きなメリットと考えられているのは、「介護業務の効率化」と「介護者の負担軽減」です。具体的には、ロボット技術を活用した見守りシステムが職員による巡回を減らしたり、ロボットスーツが移乗介助の負担を軽減したりすると言われています。


コミュニケーションロボ、3割に効果あり


介護ロボットが利用者にどれほど効果があるのかについては、実証試験によって証明されつつあります。2016年に行われた コミュニケーションロボットの大規模な実証試験 では、利用者全体の約3割に改善効果が見られたと報告されています。

コミュニケーションロボットの大規模な実証試験,3割に効果あり


今後、コミュニケーションロボット以外の介護ロボットも、効果検証が行われていく予定です。

介護ロボットの問題点

新しい福祉機器として期待が集まる介護ロボット。しかし問題点もあります。

1つ目の問題点は、介護ロボットの価格の高さです。 介護ロボットONLINEが独自に行ったアンケート では、介護ロボットを「導入していない」と答えた施設の半数以上が、導入していない理由として「価格が高いから」を選択しました。とくに小規模な事業所にとっては、高価な介護ロボットの導入はハードルが高いと言えるでしょう。

介護ロボットを導入しない理由1位は価格の高さ


さらに言えば、高価な介護ロボットを導入しても、それに見合うコストパフォーマンスが得られるかどうか分かっていないという問題もあります。「介護ロボットを導入したから人件費が削減できた」「スタッフの負担が減り、離職率が下がった」といった費用対効果がはっきりしていないので、導入しづらいのです。

2つ目の問題点は、すべての介護ロボットが必ずしも職員の負担軽減につながるとは限らないという点です。

経産省は当初、介護ロボットを「介護業務の負担軽減に資する」ものと定義していましたが、現場ヒアリングや効果検証を行っていくうちに、むしろ業務負担を増やす介護ロボットもあるということが分かってきました。

だからといって、「業務負担を増やすロボット=悪いロボット」というわけではありません。業務負担は増えるけれど、要介護者の自立支援を促したり、これまで以上に「よくする介護」に貢献したりする介護ロボットの存在が明らかになってきたのです。
「よくする介護」に貢献したりする介護ロボット
しかし事業所としては、そうした介護ロボットを導入するにはある程度の覚悟が必要になってくるでしょう。

どのくらい加算されるかは未定

現時点(2017年10月)では、介護ロボットやICT機器の導入によってどれぐらい加算されるのかはまだ決まっていません。しかし、報酬加算の妥当性を測るために介護ロボットの効果検証が政府主導で行われるなど、すでに加算にむけて動き出しています。


ネットの声は?

ネットでは、「自分が働く施設にも、介護ロボットを導入してほしい!」というポジティブな意見と、「実用化には程遠いのでは?」「ロボット会社のための加算になりそう」といったネガティブな意見の両方が見られました。また、「導入自体は悪くないが、加算をつけることに関しては賛成できない」という声もありました。

「介護ロボット」という言葉は少しずつ現場に浸透していっているものの、“ 介護報酬加算”という制度で普及を進めることに対する戸惑いが感じられます。



介護ロボット加算まとめ

(1)介護ロボットは、業務効率化、負担軽減、そして新産業育成という面から期待されている。
(2)コミュニケーションロボットの実証試験では、利用者の約3割に効果が見られたという結果が出ている。
(3)しかし、価格の高さやコストパフォーマンスの不透明さなどの問題がある。また、必ずしも業務効率化につながるとは限らない。
(4)ネットでは、介護ロボット導入を求める声もあるが、介護ロボットそのものへの不安や加算制度への戸惑いの声も少なくない。

処遇改善と介護ロボット、どちらが大事だと思う?


介護施設の経営が介護報酬で成り立っている以上、「どの分野にどれだけの加算をつけるか」は非常に大きな問題です。処遇改善加算と介護ロボット加算の他にも、介護報酬を加算すべきと考えられている項目はたくさんあります。ただでさえ削減傾向にある介護報酬を上手く分配するには、慎重な議論が必要とされるでしょう。

しかし、議論に必要とされる資料である「介護事業経営実態調査」結果公表が、衆院選後に先送りされると判明しました。関係者によれば、「資料に含まれる介護報酬引き下げを後押しするデータが、介護事業者の反発を招き、選挙に影響を与えかねないから」とのことです。

介護報酬引き下げムードが漂うなか、 ある介護関係団体は、介護報酬を引き上げるよう求める署名運動を展開しています。 「前回(の介護報酬引き下げ)は非常に厳しかった。次もマイナス改定はありえない」と強く主張する当団体の訴えは、果たして届くのでしょうか。

介護ロボットONLINEでは、今後も平成30年度の介護報酬改定の流れを追っていきます。

<参考資料>
NHK「週刊ニュース 深読み 介護報酬削減 誰が担う?どう担う??」(2015年1月17日放送)
第1回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会「介護人材の確保について 」(2014年10月27日)
東京都社会福祉協議会「特養における利用率及び介護職員充足状況に関する実態調査(概要) 」(2017年3月15日)
厚生労働省「平成28年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要 」(2017年10月16日 ,http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/17/dl/28gaiyou.pdf
<介護経営調査>公表先送り、厚労省「選挙に配慮」(2017年10月16日)
「次もマイナスはありえない」 介護関係団体、次期改定へ署名の協力を要請(2017年10月16日)

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