車いすの概念を覆す!移乗・移動ロボット「Keipu(ケイプ)」|株式会社アイザック

介護ロボットONLINE編集部介護ロボットONLINE編集部

作成日2017/10/06 更新日2017/10/171,086views

介護事故の過半数を占める「転倒・転落」。その多くは移乗介助で発生しています(※)。日常生活の中で頻回に起こる移乗介助は、要介護者・介護者ともに危険とストレスの伴うものです。

そんななか、転倒などの事故を減らすための全く新しい移乗・移動ロボットが開発されました。それが、今回ご紹介する「Keipu」(ケイプ)です。これまでの車いすの概念を覆すこのロボットについて、株式会社アイザックの渡辺諒氏に話を伺いました。

よくわかる!移乗介助の事故事例について、その予防法と報告方法 より

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株式会社アイザック「Keipu」担当の渡辺諒氏に話を伺う

病院と連携して開発

ーーー御社について教えて下さい。

当社は、医療・介護ロボットや災害対応ロボットを研究開発している会社です。

医療・介護ロボットに関しては、福島県会津若松市にある一般財団法人温知会 会津中央病院と連携して研究開発を行っています。

今回ご紹介する「Keipu」は後ろ乗りのコンセプトをベースに開発し、病院職員や患者様のご意見を頂きながら当社が製品化に向けて取り組んで参りました。

「Keipu」とは

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ーーー「Keipu」とはどのような介護ロボットなのでしょうか?

「Keipu」とは、車いすへの移乗時に発生する負担や事故を減らすことを目的とした、新しいスタイルの移乗・移動ロボットです。

「Keipu」の大きな特徴は、車いすのように背もたれが無く、バイクのように直接座面に乗り込めるスタイルを採用していることです。「Keipu」の座面をベッドの高さに合わせることで、ベッドや車椅子から直接のり移れるようになっています。

これにより、車いすでの移乗で発生しがちな転倒や事故を減らすことができ、移乗介助にかかる介護者の負担を減らすこともできるのです。

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ベッドから「Keipu」まで、”地続き”のように移乗できる(画像:http://www.aizuk.jp/keipu.php



二つ目の特徴は、その場で360度旋回できるという点です。そのため、電動車いすでは大きすぎて旋回できないトイレやエレーベーターなどの中でもスムーズに利用することができます。

ーーーエレベーター内で方向転換している動画を拝見しました。

ありがとうございます。電動車いすであれば通常、前向きに入って出るときにバックしなければいけませんが、「Keipu」は前向きに入って中で回転して、前向きに出ることができます。

ーーー操作は電動車いすと同様ジョイスティックですか?

そうです。ジョイスティックで前身・後退・旋回等の操作を行います。さらに、搭載されているタッチパネル式モニターでは、座面の高さ調整や5段階の速度調整も可能です。

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Keipu」のモニター画面。速度調整、座面の高さがタッチパネルですぐできる

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事前にベッドの高さなどが登録でき、ワンタッチで座面が調整される機能も。

移乗介助の事故を減らすために

ーーー開発のきっかけを教えてください。

「Keipu」は、車いすでの移乗に潜む危険を何とかしたいという考えからスタートしています。車いすへ、もしくは車いすから移乗する際に向きを変えたり抱きかかえたりすると、事故や転倒の危険性がどうしても高くなります。

そのため移乗機器や移乗リフトには、身体の向きを変えずに乗り込めるタイプのものが多いです。そうしたタイプの機器と電動車いすが一体化したようなものを作ろうというのが「Keipu」のコンセプトなのです。

車いすが変わると、気持ちも変わる

ーーーKeipuのこだわりを教えてください。

デザインにはこだわりました。「Keipu」をご利用いただいた方の中には、「 Keipuに乗ると車いすよりも目線が高くなるので、なんとなく気持ちが明るくなった」とおっしゃる方が多くいます。

車いすだとどうしても立っている方に見下されているような位置関係になってしまうのですが、「Keipu」では立っている方とほぼ同じ高さになるため、心理的な負担が軽くなるのでしょう。

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「Keipu」に乗ったときの目線はこんな感じ。”座っている”という感覚は少ない。

その他でも”福祉用具”らしさは強調しすぎず、健常者の方がお使いいただいても不自然でないようなデザインを心がけています。

恐怖感が少ないから、活発になる


ーーー現在病院で試用運転中とのことですが、そこでの反響にはどんなものがありますか?

病院での試用運転と並行して、自治体のレンタル事業にてすでに6ヶ所でお使いいただいている実績があります。そこでの反響をご紹介します。

まずご紹介したいのが、これまで車いすを利用していた方のケースです。この方は、車いすでの移乗で転倒した経験があり、それ以来転倒への恐怖心から外出を控えてしまっていました。

「Keipu」をご提案したところ、「これなら乗れるかもしれない」ということで使っていただいたのですが、車いすに比べ恐怖感なく使用することができたため、寝たきりのような状態が改善され、生活がとても活発になったのです。

もう一つは、「Keipu」をレクリエーション的に活用している施設のケースです。先ほど申し上げたように、車いすよりも目線が高くなり明るい気持ちになる点にを特に評価していただき、ご利用者に移動の楽しみを実感してもらうのに活用しているようです。

ーーー逆に、課題となるような反響はありますか?

たくさんありますね。例えば、介護従事者の方が、こうした機器への移乗に慣れていない、という問題があります。介護従事者の方は、一般的に対車いすでの移乗介助を勉強されているのですが、「Keipu」のような前乗りタイプの機器への移乗介助をする機会が少ないのです。そのため、「Keipu」への移乗方法を新たに確立しなければいけないということがヒアリングから判明しました。

もう一つは、価格です。電動車いすと同程度の価格で「Keipu」をご提供したいと考えているのですが、そこまでコストを下げることができていないのが現状です。

ーーー価格は、介護ロボット業界全体の課題とも言えそうですね。こうした新しい機器に対する拒絶感はどうですか?

たしかに、電動で動くことに対する不安を感じている方も少なくありません。病院や介護施設で使うことを想定しているので、ロボットがどれだけ安全でも、認知症の方などがついぶつかってしまったらどうするのか?などの声はあります。

その点に関しては、介護ロボット自体の安全性を高めると同時に、現場の意識改革も必要だと痛感しています。

「Keipu」のこれから

ーーー現在も試用運転中とのことですが、今後はどのように展開していく予定ですか?

これまでの病院での試用運転では、利用者の声を重視して開発を進めてきました。これからはそれと同時に、介護をする側の声ももっと拾っていかなくてはと感じています。

展開としては、現在もすでに一般の受注を受け付けておりますので、より多くの方に「Keipu」を知っていただき、使っていただければと考えています。

そのなかで、今後も改良を続けながら実績を増やしていきたいです。

生の声が「介護」を良くする

ーーーメッセージをお願いします。

我々の一番の目的は、介護を受ける方や介護をする方々の悩みを解消できるようにものを作ることです。当社は病院と密に連携しているため比較的意見が聞き取りやすいですが、多くの介護ロボットメーカーはなかなか生の声を聞ける環境にありません。

介護に携わる方もそうでない方も、ぜひ積極的に意見を発信していただき、いっしょに「本当に良いもの」を作っていければと思っています。

編集部まとめ

病院と連携して研究開発が進められるという強みを活かし、介護者・被介護者の声を取り入れて誕生した「Keipu」。国際福祉機器展での出展ブースは、「Keipu」に興味を持つ多くの人々で人だかりができていました。電動車いすと同程度の価格を目指しているという「Keipu」が私たちの手に届く日が待ち遠しいですね。





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