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レクリエーションを代替する介護ロボットの問題点――改めて「レクリエーション」とは【第3回】

介護ロボットONLINE編集部介護ロボットONLINE編集部

作成日2017/10/10 更新日2018/03/27651views


コミュニケーションロボットといえば、Pepperなどのロボットが高齢者に向けて体操やクイズを出す様子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

「介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験」では、そのようなコミュニケーションロボットを「介護者代替プログラム実施型」ロボットと位置づけています。

実証試験を担当した産業技術総合研究所招聘研究員の大川弥生氏は、これらのロボットに対して「『レクリエーション』というものについての本質的な誤解がある」と警笛を鳴らします。

シリーズ第3弾では、大川氏に「レクリエーションとは何か」について伺うとともに、なぜ現行のコミュニケーションロボットに問題があるのかに迫ります。

報告書を読み解くシリーズ~実証試験から分かるコミュニケーションロボットの可能性と問題点~

シリーズ1
介護コミュニケーションロボット「34%が改善」|実証試験総まとめ

シリーズ2
なぜ「活動」に着目?意外な結果から分かったコミュニケーションロボットの可能性

シリーズ3
レクリエーションを代替するロボットの問題点――改めて「レクリエーション」とは

実証試験の報告書から分かること

介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験の概要

実証試験では、目的に合わせてコミュニケーションロボットを3種類に分類しました。そのうちのひとつが、介護者代替プログラム実施型ロボットです。これは、介護者のかわりにレクリエーション等を行うロボットです。

介護者代替プログラム実施型ロボットのイラスト

介護者代替プログラム実施型
通常介護者が行う被介護者への働きかけを、設定されたプログラムにもとづいて代替して行う。
(例)体操指導やクイズ、娯楽等、レクリエーションと称して行われていること。
効果測定は、3種類それぞれに対して行われました。利用者の改善率は、ロボットの種類によって多少の差はでましたが、著しい差はありませんでした。

一方、介護者の負担軽減率は、ロボットによって大きな差が出ました。

もっとも介護者の負担を軽減したのは、環境・操作反応型です。次いで介護者代替プログラム実施型、状態検知対応型と続きました。

介護者代替プログラム実施型にたいしては、

  • 体操やレクリエーションの指導をしなくてすむ: 10 名
  • レクリエーションや体操の指導内容を考えなくてもすむ:5名
などの意見が挙げられました。

コミュニケーションロボットとレクリエーションの問題点


要介護者・介護者双方に効果が見られた介護者代替プログラム実施型ロボット。この結果だけ見ると問題はなさそうに思えます。

しかし大川氏は、「本当にレクリエーションの意味を理解している人からすると、コミュニケーションロボットがレクリエーションに効果があるという表現自体がおかしい」と指摘します。それはなぜでしょうか?

レクリエーションの発端は?


そもそも、レクリエーションは何のために行われるのでしょうか。レクリエーションの歴史から紐解いていきましょう。

大川氏によれば、戦後すぐにできたレクリエーション協会は、当時フォークダンスの普及を進めたと言います。その背景には、「男女7歳にして席を同じうせず」という思想や、戦中の抑圧された生活に対する意識変革がありました。つまり、フォークダンスによって心身機能を向上させるだけでなく、男女で手を取り合って踊ることで、「男女平等」「楽しむのは良いことだ」という意識を推進させる狙いがあったのです。

なぜ「活動」に着目?意外な結果から分かったコミュニケーションロボットの可能性 でICFの「生活機能モデル」について簡単に説明しましたが、レクリエーションをとおして「心身機能・構造」「活動」「参加」の3つのレベルに区分される生活機能という概念がそれぞれ相互に関係しあい、より良い「参加」を実現しているといえます。

高齢者のレクリエーションは何のため?


大川氏はさらに、「生活不活発病」の例をあげて高齢者のレクリエーションについて説明します。生活不活発病とは、「生活が不活発なことによって生じる全身の機能低下」を指します。

高齢者の「生活不活発病」の背景には、「家ですることがなくなる」「外出する機会が減る」などがあります。さらには「年寄りがスポーツや皆で集まってワイワイ楽しむなんて」という遠慮もあると考えられます。その結果、生活が不活発になり、さまざまな機能低下につながるのです。

この場合のレクリエーションの目的は何でしょうか?

ひとつ目は、「することがない」という状況の打破です。レクリエーションを通して「することをつくる」必要があります。

ふたつ目は、遠慮しないですむ社会通念をつくることです。戦後のフォークダンスのように、「老人は家でじっとしておくべき」という意識を変革する必要があります。

このようにレクリエーションは、単に心身機能を向上させるためだけにあるのではありません。レクリエーションを通じて、「参加」をより良い状態にすることが重要なのです。

レクリエーション支援は「人」が主役


ここまでを踏まえた上で、大川氏は「レクリエーションを効果的に行うためには、対象となる「人」の状態を把握し、その「人」にどうアプローチしていけば良いかと考え、工夫して働くかけていく必要がある」と述べます。

例えば、歩行に不自由がある人と認知機能に低下が見られる人では、レクリエーションの目標も手段も異なるはずです。それにもかかわらず、「レクリエーションの時間だから」という理由だけで両者に同じレクリエーションを提供するのは間違っています。

その意味で、レクリエーションの時間を埋めることだけを目的としたようなコミュニケーションロボットが量産されることを問題視しているのです。

まとめ


報告書の中で大川氏は、現行のコミュニケーションロボットの多くが単に「レクリエーション時間の穴埋め」を想定して開発されていることに警笛を鳴らしました。

介護者代替プログラム実施型の介護負担軽減率は4割超えと高くはありますが、「介護とは何のために行われるのか」を改めて考えたとき、「本当にそれで良いのか」と再度問いかける必要があると言えそうです。

<参考資料>
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 「 介護分野における コミュニケーションロボットの活用に関する 大規模実証試験報告書 」(2017年5月31日)

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