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介護コミュニケーションロボット「34%が改善」|実証試験総まとめ【第1回】

介護ロボットONLINE編集部介護ロボットONLINE編集部

作成日2017/10/05 更新日2018/03/272,283views


介護者のかわりにレクリエーションをしたり、触ることで反応を返したりする「コミュニケーションロボット」。人手不足が深刻化する介護の現場で、これらコミュニケーションロボットの活躍が期待されています。しかし、本当にコミュニケーションロボットは効果があるのでしょうか?

そんな疑問に応える実証試験が、2016年(平成28年)に行われました。1000台規模のロボットを投入して行われた実証試験の結果、対象者の約3分の1に活動の「質」と生活の活発さ(※1)において改善効果が認められたのです。

今回は、日本医療研究開発機構(以下、AMED)にて「 介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験 」を担当した産業技術総合研究所招聘研究員の大川弥生氏に話を伺いながら、コミュニケーションロボットの問題点と可能性を探ります。

その第一弾として、実証試験の概要と結果をまとめました

産業技術総合研究所招聘研究員の大川弥生氏に話を伺う(撮影場所:AMED)

産業技術総合研究所招聘研究員の大川弥生氏に話を伺う(撮影場所:AMED)



※1  生活の活発さは、「日頃どのくらい動いていますか」「外出の回数(施設・自宅敷地の外)」「1日何時間位(1週間で平均)建物の外に出ていますか(庭や畑等に出ることも含む)」の3つで採点。

報告書を読み解くシリーズ~実証試験から分かるコミュニケーションロボットの可能性と問題点~

シリーズ1
介護コミュニケーションロボット「34%が改善」|実証試験総まとめ

シリーズ2
なぜ「活動」に着目?意外な結果から分かったコミュニケーションロボットの可能性

シリーズ3
レクリエーションを代替する介護ロボットの問題点――改めて「レクリエーション」とは

コミュニケーションロボットとは?


今回の実証試験では、コミュニケーションロボットを下記のように定義しています。

コミュニケーションロボットの定義 介護との関係で「コミュニケーションを目的もしくは手段とする」ために用いるロボットの総称
ここでの「コミュニケーション」には、言語的なもののみでなく、非言語的なものも含まれます。例えば、鳴き声や仕草(動き)などもコミュニケーションとしてカウントされます。

コミュニケーションロボットの実証試験の概要


実証試験に使用された介護ロボットの一例

介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験 」は、経済産業省のロボット介護機器開発・導入促進事業(基準策定・評価事業)による「ロボット介護機器開発に関する調査」 として実施されたものです。

大規模で客観的な実証試験は本邦初


今回行われた実証試験は、3つの点で画期的な試験となりました。3つとは、(1)大規模で(2)同一のプロトコルで、(3)「活動」に着目して実施された点です。

実証試験の概要


これまでのコミュニケーションロボットの実証試験は、小規模、もしくは施設毎に異なるプロトコルを採用しているため検証に適していないものが多く、客観的・定量的な効果検証がなされてきませんでした。

しかし今回の実証試験では、計866名の被介護者を対象に、公募によって採択された19種類のコミュニケーションロボット同一プロトコルを用いて行われたのです。

コミュニケーションロボットの効果の有無を有資格者が評価した、初めての大規模で客観的な実証試験といえます。

被介護者の「活動」に着目して評価


評価の基準には、活動(ICF:生活行為)の「質」(自立度)と「量」が採用されました。大川氏は、「効果を見るなら、不自由な生活行為(=活動)がどのように変化したかという観点で見るべきだ」と説明し、活動の「質」を「活動項目」で、「量」を「生活の活発さ」でそれぞれ評価しました。

また「活動」の変化に加えて介護内容も記録することで、ロボットそのものの評価だけでなく、どのように活用されるべきかということまで考察できるようにしています。

実証試験の結果

全体の3分の1に効果あり

実証試験の結果、全体の3分の1に効果あり


実証試験の結果、866 名中296 名(34.2%)について、活動の「質」もしくは「生活の活発さ」において改善効果が認められました。

実証試験では、事前に1ヶ月観察期間を設け、その間に変化のなかった(改善しなかった)者のみが対象となっています。コミュニケーションロボットの介入がなければ改善する見込みのなかった人の3割が改善したというこの結果は、「介護予防という観点から見ても非常に画期的」だと大川氏は説明します。

「コミュニケーション」よりも「セルフケア」改善に効果あり


「コミュニケーション」よりも「セルフケア」改善に効果あり

報告書によれば、改善者のうち、94.6%が活動の「質」に改善の変化が見られました。とくに大きな改善が認められた活動項目は「セルフケア」で、全改善者の4割弱が改善しています。

大川氏は、”コミュニケーション”ロボットにもかかわらず、「コミュニケーション」ではなく「セルフケア」という項目においてより高い改善率を示したことは、注目に値すると指摘します。

インタビューでは、「目的としていたコミュニケーションの改善以上に『セルフケア』や『運動・移動』の改善が上回ったという結果は、コミュニケーションロボットの可能性拡大につながる」と説明したうえで、他でもない『セルフケア』や『運動・移動』が改善したという点に関して、「これらの活動は生活のなかでも不可欠かつ頻繁に発生するものであり、介護の対象としても主たるもの。ここが改善されれば、要介護者の自立支援や介護者の負担軽減につながるのはもちろん、介護報酬にも直結する」と話しました。

「セルフケア」のどのような項目が改善したかという質問に対しては、「介護プログラムの立て方によって効果は異なる」とし、あくまでロボットそれ自体に効果があるわけではなく、介護プログラムのなかでどのように使われるかが重要であると強調しました。

施設によって改善率に大きな差|鍵は”介護プログラム”

報告書によれば、改善率は施設によって大きな差が出たと報告されています。ある施設では80%以上の改善率を示している一方、別の施設では4.5%しか改善されていないというケースが発生しているのです。

施設によって改善率に大きな差,表

この理由として、報告書は介護プログラムの差を挙げています。改善率の高い施設では、介護プログラムにおけるロボットの位置づけがなされており、改善率の低い施設ではそれがなされていなかったことが分かったのです。

ここでいう介護プログラムとは、ロボットに合わせた人による促しの追加や、居室等に新聞や雑誌を設置するなどの介護内容全体の変化を含みます。

大川氏は、「ロボットをあくまで物的介護手段として認識し、どのような目標に向かってどのように使用するのか、介護プログラムに落とし込んで考えることが大事。それは、介護とは何かということにもつながる」と話します。

浮き彫りになった問題点|レクリエーションを代替するロボット

実証試験では、音楽に合わせて手を動かしたり声を出したりしながら、レクリエーションを代わりに行ってくれるコミュニケーションロボットを「介護者代替プログラム実施型」と分類しました。


大川氏は実証試験を受け、「単に”レクリエーションの時間”を穴埋めするだけのロボットが多い」と指摘します。「介護者代替プログラム実施型」ロボットに対して、「レクリエーションを通して身体を動かすことも大事だが、それを通じて「参加」をより良い状態にすることがより重要視されるべき。その目標設定がされないまま、ただ体操やクイズをすればいいという考え方が見受けられる」と話します。

まとめ

1000台規模のロボットを投入して行われた今回の実証試験。全体の3分の1に改善効果が認められたという結果は、今後コミュニケーションロボットの普及を後押しすると考えられます。

コミュニケーションの向上を目的として開発されたにもかかわらず、実際に改善が認められたのは「コミュニケーション」よりむしろ、より日常生活において頻繁に行われる活動においてでした。「セルフケア」や「運動・移動」という活動の質の改善は、要介護者はもちろん、介護者の負担軽減にもつながります

さらに、そういった効果を引き出すには、コミュニケーションロボットをいかに活用するかにかかっている。より具体的には、介護プログラムへの落とし込み、施設環境の整備などが求められるのです。

シリーズの第2弾 では、さらに詳しく実証試験の結果に迫ります!また、コミュニケーションロボットの効果検証基準として「活動」に着目した理由を、大川氏に詳しく伺いました。そこには、「介護とは何か」を考えるための深い示唆が含まれていたのです。

シリーズ2を読む▶▶ なぜ「活動」に着目?意外な結果から分かったコミュニケーションロボットの可能性


<参考資料>
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 「 介護分野における コミュニケーションロボットの活用に関する 大規模実証試験報告書 」(2017年5月31日)

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