世界初の”実用的な”介護ロボット!食事支援ロボ「マイスプーン」|セコム株式会社

介護ロボットONLINE編集部介護ロボットONLINE編集部

作成日2017/08/15 更新日2018/01/151,838views

今から15年前、日本で初めての食事支援ロボット「マイスプーン」が発売されました。「マイスプーン」を開発・販売しているのが、セキュリティで有名なセコム株式会社です。なぜ、警備会社が日本初の食事支援ロボットを作るに至ったのか?その背景と、「マイスプーン」の魅力に迫ります。

初めてでもできた!マイスプーンでお菓子を食べてみた

ーーーよろしくお願いします!

お願いします。実際に医療機関などでの患者さま向け初回練習と同じ食事を盛り付けておきましたので、さっそくデモをやってみましょう。

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食事の内容は、絹ごし豆腐、キャンディ、ひと口サイズのお菓子、ポテトサラダだ



左手の「マイスプーン」本体と食事が盛ってある専用食事トレイ、飲み物のコップスタンドがセットになっています。

「マイスプーン」は、症状に合わせて3つのモードからお選びいただけます。手動モード、半自動モード、自動モードです。実際は9割以上の方が手動モードでお使いいただいています。手動モードの場合、初回時にマニュアルに沿って操作方法を覚えていただきます。30分程度あれば覚えられます。お試し期間として2週間無料でお貸し出ししているので、ご購入前に使用感を確認していただくことが可能です。

まずは利用者の口元に食物を差し出すスプーンの位置高さを調整します。その後、その位置を「マイスプーン」に覚えさせます。次回からは調整不要で自動的にその位置から始められます。もちろん微調整や再調整も簡単にできます。

操作は顎の位置に合わせたジョイスティックで行います。

ーーージョイスティック1本のみですべての操作を行うんですか?

そうです。症状によっては、顎ではなく足や指先で操作することもできます。側頭部にボタンを持ってくることも可能です。
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標準ジョイスティックは顎で操作する


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足での操作には強化ジョイスティックとボタンを使用



口元のスプーンの位置を決めたら、あとは食べたいものに自分でピンポイントで狙いを定めます。

ーーーけっこう細かい動きができるんですね。クレーンゲームみたいでコツがいりそうです。

一見難しそうに見えますが、やっていただくと実は非常に簡単なことがお分かりいただけると思いますよ。一度試しにやっていただきましょう。
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実際に体験させてもらう



ジョイスティックは、前後左右の動きにプラスして、上から押し込むという動きがあります。この5つの動きで操作を行います。

まずは、4つに仕切られているエリアのどこにスプーンを持っていくかを決めましょう。前後左右の操作がそれぞれのエリアに対応しています。1回目の操作で、どのエリアへ向かうか指示します。

ーーー右奥のエリアを狙います。

その場合は、ジョイスティックを右に倒します。
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最初の操作でエリアを選択する



2回目からのトレイの中での操作は、クレーンゲームをイメージしてください。いま狙っていらっしゃるキャンディは細長くて、そのままではつまみにくいですよね。狙いを定めたら、ジョイスティックを顎で真下に押し込んでみてください。

ーーースプーンが横を向きましたね。

食べ物をつかみやすいように、必要に応じてスプーンの向きを変えられるんです。では次につかむところをやってみましょう。つかむ動作は、スプーンの丸みを帯びた方向(この場合は前方向)にジョイスティックを倒すことで指示できます。
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初めての操作でも棒状のキャンディをつかむことができた



ーーーつかめました!すごく簡単ですね。

そうなんです。これで操作は完了です。あとは自動的にさっき記憶させた口元位置まで運ばれます。では、実際にスプーンをくわえてみてください。

ーーー口にくわえた瞬間、お菓子をつかんでいたフォークが引っ込みました。

スプーンにセンサ機能があり、スプーンに口が触れたことをを検知しているんです。検知した瞬間にフォークが引っ込むため、歯が当たったり怪我をすることがありません。スプーンに口をつけている間アームはその場で停止し続け、口を離すと食材を取り込み終わったと判断して、基準の位置(折り畳まれた状態)に戻ります。

ーーーやってみて分かりましたが、細かい動きをすべて指示してるわけではないんですね。

全部自分でコントロールするとなると、操作負担が大きくなってしまいます。マイスプーンでは部分的に動きを自動化し、ピンポイントで操作することで誰でも簡単に扱えるようになっています。

ご年配の方も、はじめは「機械モノは苦手で、私には無理かも」と言われますが、実際にやるとすぐできるようになります。30分の研修を終える頃には、絹ごし豆腐の形を崩さずに食べることや、粘り気のあるもの、ご飯粒の一粒も残さず食べることができます。
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柔らかい絹ごし豆腐でも形を崩さない

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ご飯粒のような小さなものでもとらえることができる

世界初の介護ロボット「マイスプーン」開発背景とは?

ーーーありがとうございました。では次に、「マイスプーン」の詳細や開発背景について教えてください。

マイスプーンは、2002年に販売を開始した食事支援ロボットです。専門家からは実用レベルの介護ロボットとしては世界初との高い評価をいただいています。手の不自由な方が身体の一部を動かすだけでご自分で食事ができるようになる、いわゆる自立支援型の介護ロボットです。

ーーーどのような方が利用されていますか?

主に頸髄損傷の方や、ALS、脳性麻痺、筋ジストロフィー、慢性関節リウマチなどの疾患の方にご利用いただいています。

※頸髄損傷:事故などで首の頸髄を損傷して手足が麻痺する疾患
※ALS:筋肉を動かす運動神経が次第に衰えていく疾患
※脳性麻痺:妊娠中から出生直後に脳に損傷を受けたため手足などが麻痺する疾患
※筋ジストロフィー:筋肉の細胞が次第に衰えていく遺伝性の疾患
※慢性関節リウマチ:関節が炎症を起こし次第に変形していく疾患


セコムといえば警備という印象がありますが、なぜ介護ロボットの開発をされたのでしょうか?

実はセコムには、セキュリティだけでなくロボティクスとメディカルのノウハウが蓄積されているんです。

1986年、セコムはIS研究所という基礎研究機関を創設し、本格的な警備ロボットの研究をはじめました。ロボティクスの技術や知見が蓄えられていく一方で、医療福祉分野にも乗り出していきます。91年には民間としては日本で初めてとなる本格的な在宅医療サービスを開始するなど、先進的な事業を展開してきました。その過程で、メディカル分野の知識や技術も蓄積されてきたのです。

ロボティクスの技術とメディカル分野のノウハウが結実し、「マイスプーン」という介護ロボットにつながったのです。

「自分で意思決定しながら食べたい」に応えて


ーーー介護ロボットにはさまざまな種類がありますが、なぜあえて食事支援を選んだのでしょうか?
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お話を伺った小林茂久氏。マイスプーン発売当初から営業を担当して15年。福祉分野のスペシャリストだ



ある障害者の方の、「自分で食事ができたら良いな」という言葉がきっかけです。開発にあたって調査やヒアリングを行ったのですが、食事介助が必要な方の多くは、食事中に遠慮して自分の好きなように食べられずにいる場合があることが分かりました。自分が食べたいものをそのつど頼むのは、要介助者にとって心の負担になってしまうことがあるんですね。そんなとき、自分の手の代わりになるロボットがあれば、気遣いなく食事が楽しめるのではと考えたんです。

先ほど、「マイスプーンは自立支援型の介護ロボットだ」とお伝えしましたが、自立と介助の違いは「自分で意思決定できる」割合の差だと私は考えています。「マイスプーン」の場合、汁物などを食べるのに一部介助が残るものの、基本的には自分で食べたいものや食べるペースを誰の気兼ねなく選ぶことができます。つまり、マイスプーンは多くの方に「自立」を実感していただける用具だと自負しています。


ーーー開発中に気をつけたことやこだわりはありますか?

安全性と操作性ですね。「マイスプーン」には、異常監視機能が備わっています。本来の停止位置ではないところで停止した、つまり顔がぶつかってしまった場合、その場で緊急停止する機能です。操作性に関しても、前述のようにシンプルな操作体系を実現しています。

実は「マイスプーン」は、研究開発に11年かかっているんです。現在の姿になるまでに7回ほど試作を重ねています。その結果、日本人の食生活にもっとも適した動作に特化し、電動車いすなどでも馴染み深いジョイスティックを採用するなど、機能的・操作装置的に最適化されていきました。

「介助者の代わり」ではなく「自分の腕の代わり」

ーーー実際に利用されている方の反響はいかがですか?

頸髄損傷の方のケースをご紹介します。「マイスプーン」を使うまでは奥様から食事介助をされていた方ですが、初めて「マイスプーン」を使っていただいたとき、「これなんだよ」と涙を流し始めたんです。お話を聞くと、「自分で食べる」という感覚を長いこと忘れていたけれど、「マイスプーン」を使うことでそれを思い出したんだとおっしゃっていました。
一方、ご主人が「これで横にウルサイのがいなくても晩酌できる」と笑顔で話すと、間髪入れずに奥様が「アナタ断酒中でしょ」と合いの手を入れる息の合ったご夫婦もいらっしゃいましたが(笑)。


ーーー実際に体験してみると、「自分で食べている」という感覚が確かにあることを実感できました。

展示会でも同じような反応を頂いています。ご体験のビフォー・アフターでは、「介助者の代わり」から「自分の腕の代わり」へと、正しいご理解をお持ち帰りいただくことができます。発売開始当初は、「機械に食べさせるなんて」というネガティブなご意見があったりもしましたが、最近ではほとんどありません。介護ロボットにたいする意識が急速に変わってきたのを感じています。

助成金のアドバイスやプランニングも


ーーー利用者の抵抗感はかなり減っているのですね。
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そうですね。むしろ今は、より普及しやすい環境づくりこそが急務になってきていると感じます。「マイスプーン」は、日常生活用具給付制度の「自立生活支援用具」の要件を満たしているという位置づけですが、自治体によっては助成を受けられたり受けられなかったりします。助成を受けられる場合は、定価の1/10の4万円弱で購入することが可能です。私どもはマイスプーンを希望される方に、利用者様のかかりつけ医療機関と連携して、自治体ごとの助成に関するアドバイスやプランニングを行っています。

先ほども申し上げたように、介護現場での意識は確実に変わってきており、開発や実証の支援も国の予算で行われていますが、実際にご購入いただく段階での制度面の土台がまだ十分には整っていないのが現状です。「マイスプーン」に限らず、より多くの方に必要な器具をお使いいただくためにも、業界全体で取り組んでいくべき課題だと実感しています。

ちょっとしたことで介助をお願いするのは少し気が引けるけれど、用具を使って「自立」できるようになれたらまったく気を遣わなくて済みます。そんなふうに自分でできることが増えれば、日常生活は今よりもっと楽しくなるかもしれません。「自立支援型」の介護ロボットが色々な生活場面に広がれば、足りなくなっていく介護労働力を「自立」で補えるようになるかもしれません。

編集部まとめ

一見するとミシンのような形の「マイスプーン」。実際使ってみると本当に操作がやさしく、思いのままに動くように感じます。 「マイスプーンは介助者の代わりではなく、自分の腕の代わりなんです」という言葉からは、食事から遠慮を取り除きたいという開発者の思いが伝わってきました。「もっとたくさんの食事動作に対応し、外食時に携帯できるようになれば、きっともっと楽しくなりますよね」と語る小林氏。そんな夢のようなロボットができたら、介護の未来も変わるかもしれません。


マイスプーン 本体

名称
マイスプーン
寸法
幅28cm×奥行き37cm×高さ25cm(本体のみ、収納時)
質量
6kg(本体のみ、付属品を除く)
 付属品
専用食事トレイ、コップスタンド、専用スプーン・フォーク 


Aセット

対象
顎や手先などを使って操作棒の軽微な操作が出来る方
料金(税別)
お買い上げ:380,000円
5年レンタル:6,100円/月

Bセット

対象
体が震えるなどにより、手や足で操作棒をしっかり握って操作したい方
料金(税別)

お買い上げ:408,100円
5年レンタル:6,600円/月

Cセット

対象
操作棒の操作ではなく、押しボタンで操作したい方
料金(税別)
お買い上げ:380,000円
5年レンタル:6,100円/月



※自治体によって、日常生活用具として助成を受けることができます。申請者(一般課税世帯の方の場合)の自己負担額は商品価格の1割(9割助成で自己負担上限額37,200円)となることが多いようですが、給付上限価格が設定(30万円までが助成で超過分は自己負担など)されることもあり、特別区含む市町村(以下、市町村)ごとに助成内容が異なりますので、ご注意ください。

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