7割が「していない」ーーあなたの職場では、”ノーリフトケア(持ち上げない介護)”してますか?

介護ロボットONLINE編集部介護ロボットONLINE編集部

作成日2018/06/20 更新日2018/06/289,852views


介護現場で働く人の3人に1人が、深刻な腰痛に悩んでいるといわれています。腰痛ゆえに、長期休業を強いられたり、介護職を辞めざるを得ない人もあとを絶ちません。

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そんな腰痛問題に、介護のやり方を根本的に変えることで対応しようという動きのひとつとして「ノーリフトケア(持ち上げない介護)」があります。

ノーリフトケアとは、人力だけで要介護者を持ち上げない、抱えあげない介護のことです。ノーリフトケアを徹底することは、介護者の腰痛を防止するのはもちろん、持ち上げたり抱えあげたりする移乗にともなう要介護者の皮膚の損傷や不快感の軽減にもつながります。

ノーリフトケア先進国であるイギリスやオーストラリアではすでにその成果が報告されており、日本でも少しずつ注目を集めているのです。

介護ロボットONLINE編集部では、介護ロボットONLINEの読者に向けて、「ノーリフトケア(持ち上げない介護)」についてアンケートを行いました。

約7割が「持ち上げない介護を取り入れていない」

まずはじめに、自身の職場で持ち上げない介護を取り入れているかどうかを聞いたところ、「取り入れている」と答えた人が28.4%(21名)、「取り入れていない」と答えた人が68.9%(51名)となりました。

(1)あなたの職場では、「持ち上げない介護」を取り入れていますか?

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続いて、持ち上げない介護を職場で「取り入れている」と答えた人に対して、具体的な対策方法に関するアンケートをとりました。

(2)具体的にどのような対策をとっているか教えてください。

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具体的な対策方法を聞いたところ、「スライディングボード・スライディングシート」が90.9%(20カウント)ともっとも多く、次いで「移乗リフト」が27.3%(6カウント)、「介護ロボット(異常型)」が4.5%(1カウント)となりました(複数回答)。

比較的安価で手軽な「スライディングボード・スライディングシート」は、ノーリフトケアを取り入れているほとんどの施設で活用されていることがわかります。

一方で、移乗リフトや移乗型の介護ロボットを導入している施設は全体の3割程度と、まだまだ普及が進んでいない実態が浮かび上がりました。

ノーリフトケアに好意的な人が大半、でも課題は山積み

最後に、ノーリフトケアについて、自由な意見を聞いてみました。ここでは、そのコメントの一部を紹介いたします。

(3)「持ち上げない介護」について、あなたの意見を自由に聞かせてください。

「取り入れている」と答えた人のコメント

ほとんどの人がノーリフトケアに好意的ですが、実際の業務中では、時間や手間の関係でついいつもどおりの介護をしてしまうという声もありました。また、現状のリフトや介護ロボットでは対応しきれない要介護者に向けて、より効率的にノーリフトケアができる商品を希望する声もあります。

  • 持ち上げない介護推進派です。優しくなれる気がします。
    介護スタッフの中には時間に追われて手間だと考える人もいますが、それほどの時間もかからないし、やったことない人たちが手間だと言っている気がします。それに自分の腰は自分で守りたいです。自分が60歳になった時でも身体的な負担を感じることなく介護に携われる、そんな風でありたいと思います。理想は必要な人にリフト導入をしたいですが、高価なリフトを入れなくても、ボードやシートで持ち上げない介護をもっと推進できると思っています。
  • 介護ロボット導入しており、今操作を修得中なんですが、いざ。と言う時にはふたり介助の方が早い場合があります。ちなみに、ご利用者様は、介護ロボットが良い。と言われる方もいらっしゃいます。
  • 患者さんや利用者さんも無理矢理持ち上げられるより怖くないと思います。ただ力加減を間違えるとスライディングボードも危険なので要注意です  
  •  特養です。「座れたらトイレ」なので、本当に立てない人もトイレに行く、トイレで持ち上げない介助ができるロボットを熱望している。(現状の物は「少しでも立てる」のが前提なので実際は使えない) 
  • スライディングボードやシートをセッティングする時間がもったいなく、結局はいつものように腰に負担をかけてしまってる事が多い。 

「取り入れていない」と答えた人のコメント


「取り入れていない」と答えた人の多くも、ノーリフトケアを取り入れたいと考えていることがコメントからわかります。しかし、人的リソースや費用の問題から、なかなか取り入れるのが難しいという現状があるようです。

  • ノーリフトは、今後の介護の現場に必須だと思います。
    だだし、投入費用が切りすぎたり福祉機器の理解不足の現場が多い。
    在宅で利用出来るようになれば、自然に施設でも当たり前に使用されるようになると思う。
  • 介護者の腰痛予防だけでなく、利用者のADLの維持や恐怖心を与えない·拘縮を予防する…といった事を考えると「持ち上げない介護」をして欲しい。でも、人員不足の現状、仕事をこなすことに重きが置かれ、その方のペースに合わせた介護ができない悲しい現状があるのも事実。
  • なかなか導入が難しい。
    機器を用意する手間がかかり、あっても使わない。
     
また、訪問介護をしている人からは、在宅でノーリフトケアに使用できるツールを導入する難しさに言及する声が多くあがっていました。

  • 訪問介護では利用者さん宅移乗リフトなどの導入が難しいので、つい無理をします。また、スライディングシートやグローブも職場からは支給・貸与がないので、使用したいヘルパーは自費購入せざるを得ない状況です。
  • 操作等間違えなければ機械を使っての介護は腰痛対策にもなり高齢者の方本人への負担も軽減されるのでいいのではないかと思う。
    施設では持ち上げない介護が実施されやすいと思うが、私のようにヘルパーとして在宅介護を行なっている者の場合、なかなか浸透しにくいのではないかと感じる。
    機械などを利用者宅に導入するとしても金銭面やスペース確保の点で問題になる可能性が高いこと、現在あるロボットなどを事業所で導入するとしても資金面や持ち運びが難しいため非現実的だと感じている。
    現在あるアシストスーツなどが小型軽量化し持ち運びしやすいものができれば持ち上げない介護という考え方が在宅の方でも浸透しやすくなるのではないかと思う。

ノーリフトケアの海外事情

ノーリフトケアの考え方を早くから取り入れてきたのが、イギリスとオーストラリアです。

イギリスでは1993年ごろから、にイギリス看護協会を中心にして、”人力だけで患者を持ち上げることを避ける”考え方を取り入れはじめました。

オーストラリアでは、にオーストラリア看護連盟ビクトリア支部が、「押さない・引かない・持ち上げない・ねじらない・運ばない」というポリシーを1998年に発表しています。

とくにオーストラリアでは、厚生労働省によるプロジェクトの結果として、持ち上げる介護による負傷が48%減少、損傷によって失われるお金が74%減少、労働者の苦情処理にかかるコストも54%削減できたという調査報告もなされています。

ノーリフトケアを後押しする支援事業・補助金・助成金

オーストラリアにおける成果の背景には、州政府による資金援助や講習会などのサポートがあります。

日本においても、ノーリフトケアの後押しとなる支援事業や補助金制度がいくつかあります。ここでは、その一部をご紹介します。

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)とは、介護事業主が、介護福祉機器の導入や賃金制度の整備をすることで、介護労働者の離職率の低下に取り組んだ場合、その費用等を助成する助成金です。

介護福祉機器助成コースには、(1)機器導入助成、(2)目標達成助成の2つがありますが、そのうちの(1)機器導入助成では、介護労働者の労働環境向上のための介護福祉機器の導入した場合、その費用が助成されます。

助成対象となる介護福祉機器は6種類ありますが、その中に「移動・昇降用リフト(立位補助機、非装着型移乗介助機器を含む) 」が含まれています。支給額は、機器の導入費用や保守契約費の合計額の25%で、上限は150万円です。

さらに詳しく

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)について知る

介護ロボット導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)

介護ロボット導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)とは、各自治体ごとに介護ロボットの導入費用を補助する事業です。対象となる機器は自治体によって異なりますが、多くの自治体で、ロボットスーツを含む装着型の介護ロボットや、次世代型の移乗リフト(非装着型の介護ロボット)を対象に含んでいます。

平成30年度は、1機器につき導入経費の上限30万円程度(機器の1/2)が補助されることが多いようです。

さらに詳しく

介護ロボット導入支援事業(地域医療介護総合確保基金) について知る

まとめ

今回のアンケートからは、日本ではまだまだノーリフトケアが徹底されていないということがわかりました。何かしらの対策をしている事業所であっても、忙しいときや緊急のとき、つい慣れ親しんだこれまでの介護のやり方をしてしまうケースも少なくなく、定着の難しさが浮かび上がっています。

また、訪問介護では、そもそもノーリフトケアができるような環境を整備しづらいという実態も明らかになりました。

ノーリフトケアが普及しない原因の一つに、ノーリフトのためのツール(移乗リフトや介護ロボット)の価格の高さがあります。日本にもノーリフトケアを促進する支援事業や補助金はありますが、より普及を進めるためには、オーストラリアのような国全体での取り組みが必要なのかもしれません。

< アンケート調査概要 >
・調査期間:2018年6月13日(水)~6月20日(水)
・調査対象:介護ロボットONLINEの読者

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