ICT活用で介護はどう変わる?メリットと今すぐICT化すべき業務

介護ロボットONLINE編集部介護ロボットONLINE編集部

作成日2018/03/30 更新日2018/04/193,155views


最近よく耳にするICT。介護の現場でも、ICTを活用した業務効率化が重要視されてきています。
一方で、「なんか難しそう」「どうやって活用すればいいの?」「ICTを導入すると何が変わるの?」と思っている人も少なくないでしょう。

手作業やアナログでの業務が多い介護業界では、ICT化がこれからの経営を左右するといっても過言ではありません。今回は、介護におけるICT化のメリットや課題、導入を成功させるコツなどを紹介します。

ICTとは?

ICTとは「Information and CommunicationTechnology」の略で、日本では「情報通信技術」と訳されます。日本ではIT(情報技術)に代わる言葉として、2000年代後半から注目されるようになりました。

「Communication/コミュニケーション」という単語が含まれていることからもわかる通り、ICTには情報処理の技術だけでなく、情報をどのように伝達・共有するかという意味合いも含まれています。

IT、IoTとの違い

ICTのほかに、IT、IoTという言葉もよく使われます。ここでそれぞれの違いについて理解しましょう。

ITとは

ITとは「Information Technology」の略で、日本では「情報技術」と訳され、ICTとほぼ同じ意味で使われています。

ITという言葉の誕生の背景には、急速に加速したPCやインターネットの普及があります。当時は主にオフィスでの業務効率化や高速化がすすめられました。その後、2000年以降にブロードバンド回線や携帯電話が浸透し始め、個人でもITにふれる機会が多くなっていきます。

IoTとは

IoTとは「nternet of Things」の略で、日本では「モノのインターネット」と訳されることが多いです。あらゆるモノがインターネットとつながる仕組みや、その技術のことを指します。インターネットに接続されたモノから情報を取得したり、取得した情報を分析して反応を返したりします。

具体的には、インターネットに接続された体重計から取得した体重をスマートフォンに自動で記録したり、記録した体重を分析して運動アドバイスをしたりするサービスなどが挙げられます。

介護のICT化の背景

ICT、IT、IoTの違いもわかったところで、ここからは介護現場におけるICT化について考えていきましょう。今、介護の世界ではICT化の波がきていますが、その背景には「人材不足」があります。

「3人に1人が高齢者」の未来


高齢者人口の推移のグラフ

すでに周知のとおり、日本は少子高齢化が進んでいます。2015年には4人に1人が高齢者となり、その割合はこれからも増大していくと考えられています。2035年には、なんと3人に1人が高齢者になると見込まれています。

高齢化がすすめば、その分要介護者も増えるでしょう。「介護難民」を減らすためにも、介護人材の確保は急務なのです。

介護業界のICT活用率は最低レベル

介護人材の確保と同時に、介護の業務効率化も不可欠です。

内閣府の調査によれば、このままでは2030年までに日本の労働力人口は約900万人減ってしまうことが予測されています。

労働力人口が減っていくなか、増え続ける介護需要に応えるには、介護業務を効率化するしかありません。とくに介護の現場では、いまだに多くの事務作業が手作業で行われているといわれています。

実際、総務省の調べによれば、保健・医療・福祉業界のICT活用率・効果ともに産業最低であることが分かっています。
各産業のICT活用率のグラフ

画像引用: http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/html/nc114640.html 

このように、介護のICT化による業務効率化が今、最大の課題となっているのです。

ICT化のメリット・デメリット

ICT化の重要性が理解できたところで、ICT化によるメリット・デメリットを整理していきましょう。

ICT化のメリット

ICT化のメリットには、直接的なメリットと間接的なメリットの2種類があります。

まずは直接的なメリットとして、以下の4つを紹介します。

  1. 事務作業の軽減、ストレス軽減
  2. 科学的介護の実現
  3. コミュニケーション活性化
  4. 生産性の向上
一番のメリットは、記録業務のICT化による事務作業の軽減や、事務作業のストレス軽減です。ホームヘルパーが訪問先でスマートフォンから介護記録を入力したり、タブレットで次の訪問先の情報を得たりすることが考えられます。

また介護記録などをICT機器で分析・フィードバックすることで、科学的根拠に裏付けられた介護(科学的介護)が実現するでしょう。

さらに、スタッフがスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末をもつことで、スタッフ間の情報共有やコミュニケーションが活発化することも期待できます。

また、ICTで売上や居室稼働率を予測したり、コスト管理を図ったりすることで施設運営全体の生産性を向上させることも可能です。

間接的なメリットとしては、以下の4つを紹介します。

  1. 離職率の低下
  2. 若手人材の確保
  3. ケアの質の向上
  4. 介護職の魅力の向上
まず挙げられるのが、業務負担やストレスの軽減による離職率の低下や、スマホ世代である若手人材の確保です。ICT化してすぐに効果が出るものではありませんが、長期的に見ればリクルート面でもメリットがあるのです。

また、これまで事務作業にあてていた時間をケアの時間にあてることで、ケアの質の向上も期待できるでしょう。そうすればスタッフのやりがいや介護職という仕事自体の魅力アップにもつながります。

介護業界においてICT活用に取り組むことは社会的にも話題性があります。事業所としてだけでなく、介護業界全体のイメージアップや採用にも貢献するでしょう。

ICT化のデメリット

ICT化のデメリットは、主に以下の3つです。

  1. 導入コストが高い
  2. 情報漏えいリスクがある
  3. スタッフへの教育が必要
もっとも大きなデメリットは導入コストの高さです。ICT化を実現するには、施設内全体にインターネット環境を整備したり、パソコンやスマホなどのデバイスを購入したりする必要があります。個人情報を扱う場合は情報漏えいにも気をつけなければいけないので、セキュリティ対策にも費用がかかるでしょう。

また、ICT機器を扱うスタッフへの教育も不可欠です。とくにパソコンなどのデバイスに慣れないスタッフにとっては、慣れるまでは今まで以上の手間やストレスがかかってくる場合もあります。

ICT化が求められる介護業務とは?

メリット・デメリットが理解できたところで気になるのが、「ICTって、具体的にどこでどういう風に使えるの?」というところですよね。ここからは、介護においてICTが活用されはじめている例を紹介していきます。

介護記録をICT化

ICT化が急速に進みつつあるのが「介護記録」です。現状、介護記録の多くは手作業で行われており、介護保険請求を行ったり行政などに提出したりするために使われています。しかし事務業務が多すぎて残業したり、本来のケアに注力できなかったりという本末転倒な事態に陥っている事業所も少なくありません。

介護記録をICT化することで、ケアプランやアセスメントチャート作成の時間が軽減できたり、介護記録を持ち歩かずにすむことでヘルパーが直行直帰できたりするといったメリットがあります。また、紙ベースよりも楽に情報共有ができるという点も大きなメリットでしょう。

タブレットデバイスの導入

最近介護施設でよく見られるようになってきたのが、iPadなどのタブレットデバイスです。ある事業所では、タブレットでシフト要請やケアプラン呼び出しなどを行うことにより、2年間で約10%の労働時間削減に成功したという例もあります。

タブレットデバイスはパソコンよりも直感的に操作できるため、スマホ世代の若い人材も抵抗感なく使えるのがポイントです。

見守りロボットを始めとしたIoT機器の導入

じわじわと浸透し始めているのは、見守り支援ロボットをはじめとしたIoT機器の導入です。バイタルデータなどを取得して離床や在室などを判断し、必要に応じて通知してくれるだけでなく、取得したデータを分析してケアプラン作成時の参考資料となるようにまとめてくれる機器まで登場しています。

ICT化を阻む課題

深刻な人材不足を前に、急務となっている介護現場のICT化。しかし、そんなICT化を阻む課題が残されています。

使いこなせない

これまで多くの業務を手作業で行ってきたスタッフにとって、突然パソコンやタブレットを使いこなせないといわれても難しいでしょう。介護福祉系の学校でもまだICTに関する教育過程がないことも、ICTの普及を阻んでいる一つの要因といえそうです。

スタッフからの反発

使う前からICT機器に抵抗感をもっている人も、実は少なくありません。Wi-Fi環境などに左右されてスムーズに使えなかったり、慣れないデバイスの操作方法を一から覚えなくてはならなかったりと、ICT機器を導入することで増える手間も確かにあるからです。

導入コストの問題

最後の課題は「導入コスト」です。デメリットでも挙げましたが、ICT化するにはネットワーク環境やデバイスの整備が不可欠となるため、初期費用がどうしても高くなる傾向にあります。また一度購入してしまえば終わりというわけではなく、介護記録ソフトであれば月額使用料がかかるなど、ランニングコストも発生します。

しかし近年では、ICT化に補助金がでたり、ICT化することで報酬加算されたりする動きがではじめています。次章では、ICT化にまつわる介護報酬改定や補助金制度について解説します。

介護のICT関連の報酬加算・補助金制度

2018年度に実施される介護報酬改定では、介護事業所や業務のICT化を評価する改定が決定しています。たとえば訪問介護では、ICTを活用し動画などで利用者の状況を把握し、定期的に助言する場合、加算が取得できるようになりました。その他の例も見ていきましょう。

テレビ電話でリハ会議に参加【通所リハ・訪問リハ】

2018年度の介護報酬改定で、リハビリテーション会議への医師の参加が、テレビ電話などを活用した遠隔参加でもOKとなりました。これにより、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)が算定しやすくなります。

動画で利用者の状況を把握・助言【訪問介護】

先述したとおり、訪問介護ではICTを活用した動画などで利用者の状況を把握・助言が評価されるようになりました。具体的には、生活機能向上連携加算(I)という加算が算定できるようになります。

オペレーターの専任要件が緩和【定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護】

定期巡回型サービスでは、ICT等の活用によって利用者情報確認やコール対応ができれば、オペレータと事業所の職員の兼務が認められることになりました。

排せつ介護の分析にICTを活用【介護老人福祉施設】

今回の改正で新たに作られた排せつ支援加算は、排せつ介護に要する原因分析し、その結果を踏まえた支援計画と支援をするした場合に算定される加算です。分析に使える介護ロボットやICT機器を導入することで、加算を取りながら質の高い介護が実現できそうです。

ICT導入に使える補助金制度

IT導入補助金

ITツールを導入しようとする中小企業・小規模事業者に対して、生産性の向上を図るために経費の一部を支援する補助金です。パッケージソフトの費用はもちろん、WEBサーバーの利用料や導入にかかる教育費用なども補助の対象となっています。

補助金の対象となるのは以下のとおりです。

  • パッケージソフトの本体費用
  • クラウドサービスの導入・初期費用
  • クラウドサービスの契約書記載の運用開始日から 1年分までのサービス利用料、ライセンス、アカウント料
  • パッケージソフトのインストールに掛かる費用
  • ミドルウエアのインストールに掛かる費用
  • 動作確認に掛かる費用
  • IT ツール(ソフトウエア、サービス等)の導入に掛かる教育、操作指導費用。また、事業計画の検討に関係するコンサル費用(しかし、関連会社、取引会社への説明会等費用は補助対象外)
  • 契約書記載の運用開始日から 1年分までの問い合わせ・補助対応に掛かる費用、保守費用
  • 社内外・取引先向けホームページ制作サービス初期費用
  • 契約書記載の運用開始日から1年間の WEBサーバー利用料(ただし、既に存在するホームページの日常的な更新・改修費用は補助対象外)

地域医療総合確保基金(介護分)

地域医療総合確保基金(介護分)とは、介護施設や介護従事者の確保に向けた取り組みを支援する基金です。人材確保の一環として職場環境の改善を支援していますが、そのなかに「介護ロボット導入支援事業」があります。補助内容は自治体によって異なりますが、1機器につき導入経費の2分の1(上限10万円)程度が補助されることが多いようです。

介護現場で今すぐ使えるICTはこれ!

ここでは、実際に介護の現場で使われているICT機器を紹介します。

介護記録システム「ケアコラボ」

ケアコラボ(carecolLabo)は、アセスメントからケアプランの作成、日々のケア記録に特化した介護記録システムです。

バイタルや食事量などの基本的な記録はもちろん、写真や動画も記録でき、それらを一元管理することが可能です。またそうした情報をスタッフ同士だけでなく利用者の家族とも共有できる点が特徴です。

排せつ予知デバイス「DFree」

排せつ支援加算に活用できそうな機器として「DFree」があります。DFreeは、超音波センサーで膀胱の大きさの変化を捉え、排尿の前後のタイミングをアプリでお知らせしてくれるICT機器です。

2018年4月には「排泄自立支援」プランのサービス展開を開始し、個人の排泄状況をアセスメントし、その方にあった支援計画を作成するサポートまで行ってくれます。

失敗しない導入の進め方

業務効率化や生産性アップに貢献してくれるICTですが、導入の仕方を誤ると、せっかく購入したスマホやタブレットが使われずに放置されてしまう、という事態にもなりかねません。介護事業所や介護業務のICT化を成功させるには、以下の3つを意識しましょう。

現場で導入を推進する人材の確保

どんなに便利なサービスでも使われないと意味がありません。現場の意見も聞かず、トップダウンでICT化を進めるのではなく、現場レベルでICT化をいっしょに進めてくれる推進者を確保しましょう。

成功事例に学ぶ

介護業界のICT化はまだはじまったばかりですが、すでに先駆的な施設はめざましい成果を挙げています。そうした施設に話を聞いたり足を運んだりすることで、成功した要因や自分の施設でも活かせそうなポイントを習得しましょう。

タイミングを図る

何の問題もないところに、突然ICTを導入しようとしてもうまくいきません。現場で困っていることや悩んでいることを探り、その解決にむけてみんなの心が動いているときこそ、ICT化のベストタイミングです。

ICT化はあくまで手段

介護報酬が改定される2018年度以降、ますます盛んになるだろう介護業界におけるICT化。ICT化は、介護の人材不足という避けては通れない大きな課題を解決するための重要な手段です。

業務効率化のために、多くの事業所が介護記録システムや介護ロボットを導入せざるを得なくなるでしょう。そんなとき忘れてはならないのが、ICT化はあくまで手段であるということです。

ICT化の真の目的は、離職率の低下や定着率アップにつながる職場環境の改善や、利用者のQOL向上やADL維持にあります。ICT機器を選ぶときは、「導入することで介護の質に貢献するか?」という視点をぜひ持っておいてください。

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