データ分析とロボ導入で事故を削減|見守りケアシステム M2

データ分析とロボ導入で事故を削減|見守りケアシステム M2

 

形態

特別養護老人ホーム

規模

100名

東京都あきる野市に、介護ロボットを始めとする新しい介護機器を積極的に取り入れている施設があります。それが、特別養護老人ホーム あたご苑です。

あたご苑が改革のために最初に行ったのが、現状の「データ化」です。利用者情報や介護業務をデータ化し、分析した上で改善を進めていった結果、年間の事故件数が減少したと言います。

事故を減らすためにあたご苑が導入を決めた「見守りケアシステム M2」について、関係者に詳しく話を聞きました。

介護室 室長の阿部さん(左)、情報室 室長の大原さん(中央左)、管理課 課長の浅岡さん(中央右)、理事・施設長の増田さん(右)に話を伺った

<インタビュー協力>

特別養護老人ホーム あたご苑(社会福祉法人 緑愛会)

理事・施設長 増田俊一さん

管理課 課長 浅岡恵子さん

情報室 室長 大原俊之さん

介護室 室長 阿部豊志也さん

導入前|事故を減らすために

ーーーあたご苑では、今回お話を伺う「見守りケアシステム M2」を始め、ロボットスーツのHALや 新型ナースコール「Yuiコール」を導入していますね。そうした機器、設備導入の目的は何なのでしょうか?

「物理的にサポートが不可欠だった」と話す増田さん

◆増田さん

一言で言えば、「事故を減らすため」ですね。当施設では、骨折を含む重大事故が年間で10件前後、発生していました。事故の原因にはヒューマンエラーもありますが、ヒューマンエラーをなくす努力だけでは事故は減りません。機器を導入して、介護スタッフを物理的な面からサポートする必要があると考えました。

そこで、現状を把握するために「情報室」という部署を新たに創設し、利用者様のデータを集め、分析することにしたのです。その結果、特に注意して見守りが必要な利用者様は、全体の約3割程度を占めるということが分かりました。この3割の利用者様に対して新しい機器を導入していこうと決め、導入計画を立てていったのです。

ーーー数ある見守りロボットの中から「見守りケアシステム M2」を選んだ理由を教えてください。

◆増田さん

もともと、フランスベッドの超・超低床ベッド(※)を使っており、現場からの評判も良かったのが大きいですね。

※フランスベッド株式会社の超・超低床 フロアーベッド

超・超低床フロアーベッドは全18台導入している

加えて、介護ロボットの補助金が出るかもしれないということで、まずはダメ元でもいいから申請してみようという流れになりました。

思いがけず申請が通り、導入するか迷っているタイミングで、介護課の室長である阿部に意見を聞いたのです。すると「ぜひ導入してほしい」ということだったので、管理課の浅岡に相談しながら、本格的に導入へと動き出しました。結果的に、補助金を活用して「見守りケアシステム M2」を9台、ロボットスーツの「HAL」を1台導入しています。

ーーー阿部さんにお伺いします。こうした新しい機器を導入することに、抵抗感はありませんでしたか?

「介護スタッフの負担軽減になるなら」と話す阿部さん

◆阿部さん

ありませんでしたね。やみくもに導入しているわけではなく、介護スタッフの労力や負担を軽減するという目的を持って導入してくれていることを理解しているので、現場もすんなり受け入れることができました。

運用|ナースコールと連携

ーーー「見守りケアシステム M2」の運用方法を教えてください。

◆阿部さん

「見守りケアシステム M2」は全9台導入しており、3階ある各フロアに3台ずつ設置しています。新型ナースコールである「Yuiコール」と連携しているため、「見守りケアシステム M2」が離床などを検知したら、ナースコールが鳴るようになっています。

利用者様の様子(起き上がりや端座位、離床など)はモニターで確認することもできますし、ナースコールを受信したピッチから利用者様に向けて話しかけることも可能です。

ーーーコールは日に何回くらい鳴りますか?

利用者様によりますね。というのも、通知レベルを個別設定することができるからです。

通知モードは個別に設定が可能

例えば、体動が激しく転倒経験もあるような方に対しては、起き上がりの段階でコールが鳴るようにしたり、逆に夜間のトイレ誘導を特に気をつけたいという方には、端座位の段階でコールが鳴るようにしたりなど、利用者様の状況やリスクに応じて設定しています。

コールが鳴ったら、基本的にはその近くにいるスタッフが対応しています。

ーーーこれまではどのように見守りしていたのですか?

◆阿部さん

ベッド下に敷くマットセンサーと、ベッドの端に設置するサイドセンサーを使っていました。既存のセンサーの問題は、アラートが鳴っても利用者がどのような状態にあるのか分からず、とにかく居室まで様子を見に行くしかないという点です。

また、既存のナースコールは、ベッド単位でなく部屋単位で通知が来るので、居室に行くまで、どなたが鳴らしたのか分からない、という状態でした。

こうした問題が、スタッフの肉体的、精神的負担に直結していました。特に夜間帯は、各階32~34名の利用者様に対して、スタッフ1名(+補助1名)で対応しており、見守りにかかる負担が非常に大きくなっていたのです。その結果、事故につながってしまうことも少なくありませんでした。

効果|事故件数が減少

ーーー「見守りケアシステム M2」を導入してから、事故件数に変化はありましたか?

◆大原さん

重大事故はかなり減っています。導入前は年間で10件前後だったところ、導入後減少致しました。

これは、単に離床検知の精度があがっただけでなく、「とにかく駆けつける」という無駄な行き来が減ったことでスタッフに余裕ができ、その分、必要な対応に時間を割くことができるようになったのが要因として挙げられると考えています。

利用者様の様子がモニター上で見られるので、どういう状況で鳴ったのかが一目瞭然で対応もしやすくなりました。

ーーーありがとうございます。逆にトラブルはありませんでしたか?

◆阿部さん

M2単体でのトラブルや不具合はほとんどありませんね。ナースコールとの連携上、うまく作動しないということもありましたが、ナースコール側が遠隔で直してくれるので、トラブルが起きてもすぐ解消され助かっています。

データ化の重要性

ーーーあたご苑では情報室を新設するなど「データ化」を重視されていますが、M2のデータも活用されているのでしょうか?

◆大原さん

はい、しています。M2では、ナースコールアラートの時刻や回数が自動で記録されるので、それらをPCに移し、介護業務に活かしています。また、オプションで居室内の温度や湿度も記録されるため、それを基に温湿度管理をしていますね。

スタッフから集めた「気づき」と合わせて、こうしたデータを報告書にして職員会議で発表し、情報共有を進めています。

ーーー今後、増設する予定はあるのですか?

◆浅岡さん

阿部からは「増設してほしい」という要望があがっているので、前向きに検討しています。何台増設すべきか、どの利用者様に導入すべきか、というところは、阿部や情報室の大原から報告を受け、予算と照らし合わせながら計画を立てて判断するという流れですね。


情報室のデータを基に作成したリストの一例

ーーー棲み分けがされているのですね。そもそも、情報室を設置している介護施設は珍しいと思います。

◆増田さん

情報室を新設した背景には、「ソフト面とハード面両方でバックアップしないと、リスクは絶対減らない」という考えがあります。

あたご苑の施設長に就任して3年目になりますが、就任当時は、他の施設と比べても、多くの点で課題を抱えている施設でした。就任してから1年間は現状を把握することに時間を割き、2年目から改革を進めていったのです。その一環として、情報室の新設がありました。

これまでに、施設の大規模改修や新しい機器の導入などを進めてきて、ようやくスタートラインにたてたかなというところまできています。

居室には真新しいパーティションが設置されており、全体的に清潔感のある印象

ハード面は整ってきたので、来年度からは、「スタッフを第一に大事にする」という目標を掲げて、ソフト面での改善を進めていく予定です。

ーーーありがとうございます。最後に、介護ロボットの導入を検討している介護施設にむけてメッセージをお願いします。

◆阿部さん

特に当施設のような特養では、介護スタッフの人手不足はかなり深刻な問題です。利用者様の要介護状態や認知症状も年々重くなってきており、介助の手はかかる一方です。

その中で、どのように安全に生活してもらうかはすべての事業所に共通する課題だと思います。少ないスタッフで大勢の利用者様を見なければいけない状況で、少しでも負担軽減につながったり、安全につながったりする手段があれば、積極的に取り入れていくべきだと思っています。

介護施設での虐待などがニュースになることもありますが、その背景には、スタッフの余裕の無さがあるはずです。余裕を作れるよう、うまく介護ロボットやICT機器を使っていけば、そうした事件も減っていくのではないでしょうか。

<取材先情報>

特別養護老人ホーム あたご苑(社会福祉法人 緑愛会)

住所:〒190-0161 東京都あきる野市入野811番地

Tel : 042-596-5151

Fax :042-595-1493