介護ロボット導入のメリットって何?今後の課題と問題点

介護ロボットとは介護ロボットONLINE編集部

作成日2017/10/12 更新日2017/12/131,809views

介護ロボット」をご存知ですか? 超高齢社会に突入した日本で、介護にまつわる問題が取り沙汰されない日はありません。介護職員の人材不足や腰痛、在宅での老老介護など、問題は深刻になっていくばかりです。近年、それらに対するひとつの解決方法として新たに注目を集めているのが「介護ロボット」です。

  • そもそも「介護ロボット」って何
  • 介護ロボットにはどんな種類があるの?
  • 介護ロボットの現状は? 今の普及率は?
  • 介護ロボットのメリット・デメリットは?
  • 介護ロボットの課題は?問題点は?


ここでは、そんな介護ロボットの基礎知識をまとめました。

介護ロボットとは

介護ロボットとは

介護ロボットとは、介護に用いるロボットの総称です。

しばしば「福祉ロボット」や「ロボット介護機器」「次世代福祉機器」などと呼ばれることもあります。

介護ロボットはときとして 「介護者の負担を軽減するもの」と定義づけされますが、厳密には誤りと言ってよいでしょう。なぜなら、介護ロボットは必ずしも「介護者の負担を軽減する」とは限らないからです。

介護ロボットは、介護者の作業を代替するためにあるのではなく、あくまで被介護者のためにあるものであることを忘れてはいけません。

ロボットの定義

では、「ロボット」とは何でしょうか。ロボットの定義は、今のところ経済産業省による「ロボット政策研究会」が提案している「ロボット3条件」が現状に即していると言えるでしょう。

ロボット3条件とは、

  1. 情報を感知し(センサー系)
  2. 判断し(知能・制御系)
  3. 動作する(駆動系)
を指します。 これらの要素を備えているものを、広く「ロボット」であると定義しています。ロボットと聞くとつい鉄腕アトムのような二足歩行のロボットを思い描きがちですが、実はそれだけではないということが分かります。

<<さらに詳しく>>

介護ロボットの定義についてさらに詳しく知りたい方は、関連記事「 介護ロボットって何?意外と知られていない定義に迫る 」をご覧ください。

介護ロボットの種類

現在、介護ロボットは大きく3つの種類に分けられます。介護支援型・自立支援型・コミュニケーション・セキュリティー型です。

介護ロボットの種類

介護支援型

介護支援型ロボットとは、主に移乗・入浴・排泄など介護業務の支援をするロボットのことです。現在、要介護者の移動・移乗は多くの場合「人の手」によって行われており、それによる介護職員の腰痛などが問題となっています。

介護支援型ロボットは、それらの負担を軽減することが期待されています。 同時に、要介護者の介護負担の軽減も望めます。要介護者側にとって、人力による移乗介助は、落とされるような不安や痛みを伴うことがあります。介護支援型ロボットを使用することによって、より安心感のある介助が実現できます。

(例)リショーネPlus(パナソニック エイジフリー株式会社)

自立支援型

自立支援型ロボットとは、歩行・リハビリ・食事・読書など介護される側の自立を支援するロボットのことです。利用者が上肢や下肢に装着して運動機能を補助するものや、体の一部を動かすだけで自分で食事ができるようにするものなどがあります。 利用者の負担を軽減するだけでなく、利用者の生活力を向上させることで、利用者に自信をつけ、自立した生活 への意欲を引き出すことが期待できます。

(例)マイスプーン(セコム株式会社)

コミュニケーション・セキュリティー型

コミュニケーション・セキュリティー型ロボットとは、利用者とコミュニケーションをとることで、メンタルケアや見守りに活用するロボットのことです。言語的コミュニケーションに限らず、音楽や体操などのレクリエーションなどを通して、利用者のメンタルケアをサポートするものもあります。

近年の調査では、コミュニケーションだけでなく、セルフケアなどの活動にも効果があることが明らかになりました(※)。

また、介護施設や在宅介護において、ロボット技術を用いた見守り支援ロボットもここに含まれるでしょう。要介護者が自発的に助けを求める行動に依存せず、センサーなどで情報が自動的に介護従事者に知らされることで、見守りが可能となります。

(例)Pepper(ソフトバンク株式会社)

※国立研究開発法人 産業技術総合研究所(2017年)「介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験」より

<<さらに詳しく>>

どんな介護ロボットがあるか知りたい!という方は、 市販されている介護ロボット一覧ページ をご覧ください。


介護ロボットの重点開発分野

現在、国を挙げて介護ロボットの開発・普及を後押ししていますが、政府は特に重点的に開発をすすめる分野として、下記の5分野8項目を策定しました。
→※重点分野が1分野5項目追加となりましたので追記します(2017/10/17)。合計で6分野13項目になりました。

介護ロボットの重点分野が6分野13項目に拡大

経済産業省「「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂しました~自立支援に資するロボット介護機器の開発を後押し!~」(2017/10/17)より

1.移乗介助


  • 装着型
介助者のパワーアシストを行う装着型の介護ロボットです。

(例)HAL®介護用腰タイプ(CYBERDYNE株式会社)

  • 非装着型
介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の介護ロボットです。

(例)取材記事: ベッドが車いすに大変身!離床アシストロボット「リショーネPlus」|パナソニックエイジフリー株式会社

2.移動支援

  • 屋外用
高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できる歩行支援用介護ロボットです。

(例)取材記事: 高性能でカッコイイ!新しい歩行器ロボットアシストウォーカーRT.1・RT.2|RT.ワークス株式会社

  • 屋内用
高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援する歩行支援用介護ロボットです。

(例)免荷式リフト POPO(ポポ)(株式会社モリトー)

  • 装着型歩行支援 ←NEW!
高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援ロボットです。

(例)取材記事: 無動力で安心、快適。「歩き」を助ける「ACSIVE(アクシブ)」 |株式会社今仙技術研究所

3.排泄支援

  • ポータブル型排泄機器
居室での使用・位置調整が可能で、においが室内に広がらない排泄支援用介護ロボットです。

(例) 取材記事:真空圧で匂いも吸引!水洗ポータブルトイレ「キューレット」|アロン化成株式会社

  • 排泄予測  ←NEW!
ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する排泄支援ロボットです。

(例)取材記事: 世界が注目!排泄予知ロボット「DFree」|トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

  • トイレ内動作支援  ←NEW!
ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する排泄支援ロボットです。

4.認知症の方の見守り

  • 介護施設用
 介護施設において使用する転倒検知センサーや外部通信機能を備えた見守り支援用介護ロボットです。

(例) 取材記事:ケアプラン改善にも!次世代マット式見守りシステム「眠りSCAN」|パラマウントベッド株式会社
(例)取材記事:業界初!予測型見守りシステム「Neos+Care(ネオスケア)」|ノーリツプレシジョン
 
  • 在宅介護用
在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えた見守り支援用介護ロボットです。

(例)取材記事:個人賠償責任保険も!認知症外出通報システム「おでかけキャッチ」|フランスベッド株式会社

  • コミュニケーションロボット  ←NEW!
高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器、いわゆるコミュニケーションロボットです。

(例)取材記事:

認知機能の向上も!コミュニケーションロボット「いっしょに笑おう!うなずきかぼちゃん」|ピップRT株式会社


5.入浴支援

浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する介護ロボットです。

6.介護業務支援 ←NEW!


ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする介護ロボットです。

<<関連記事>>

介護ロボットの種類について知りたい?→介護ロボットにはどんな種類がある?一覧表にまとめてみたをチェックする!

重点分野の各項目について知りたい?→ 支援対象となる介護ロボット|とくに重点的に支援される6分野 をチェックする!

介護ロボットの導入支援・開発支援事業について知りたい? →介護ロボットの導入支援・開発事業まとめ をチェックする!

平成29年度の最新情報がすぐ知りたい?→【平成29年度】介護ロボット導入支援事業における補助金【都道府県別一覧】 」をチェックする!

介護ロボットの現状


現在、介護ロボットはどのくらい普及しているのでしょうか?

現状の普及率を表す正式な調査はまだ行われていませんが、 介護ロボットONLINEが独自で行ったアンケート では、アンケートに回答した施設の約3割が介護ロボットを導入しているという結果となりました。

介護ロボットONLINEが2017年6月から7月にかけて行った独自アンケート調査のグラフ、現在、介護ロボットを導入していますが?の問いに、いいえは71.4%、はいは28.6%

少しずつ導入が進んでいるといえますが、本格的な普及へはまだまだ時間がかかりそうです。

話題となった「介護ロボット等導入支援特別事業」


政府は、普及のためにこれまでさまざまな支援事業を行ってきました。代表的なものが「介護ロボット等導入支援特別事業」です。

平成27年度の補正予算52億円を使って厚生労働省によって実施された支援事業で、1施設につき最大300万円まで介護ロボットの購入費用を補助してくれることで話題となりました。しかし全国の介護福祉施設から応募が殺到したため、補助金額の上限は約3分の1にまで引き下げられています。

これほど「介護ロボット等導入支援特別事業」に注目が集まったのも、多くの施設が介護ロボットに興味があることの証拠でしょう。

現在、「介護ロボット等導入支援特別事業」はすでに終了しているため、現状ではそれほど大規模な導入支援事業は行われていません。しかし、気軽に介護ロボットを体験できる施設やショールームも増えてきており、着実に知名度を上げてきているのは間違いないでしょう。

介護ロボットのメリット

介護ロボットのメリットとしては、介護業務の効率化や介護スタッフの身体的負担の軽減などがまず挙げられます。

例えば、見守り支援ロボットを導入したことにより、巡回での見守りを減らし、必要なときにのみ駆けつけるというオペレーションに変更したことで、巡回していた時間を他の業務に充てることができます。

また、移乗介助ロボットを使うことで、これまで人の手でやっていた移乗業務の一部を介護ロボットが担うため、介護スタッフにかかる身体的な負担が減ります。

さらに介護ロボットは、利用者(要介護者)の心的・身体的な負担の軽減にもつながるケースがあります。

例えば、寝ているのに定期巡回のたびに起こされてしまっていた利用者が、見守り支援ロボット導入で必要なときのみの駆けつけに切り替わることにより、朝までぐっすり眠れるようになった、などのケースです。

また、おむつを利用しており、これまで決められた時間でしかおむつ交換されなかった利用者が、自動排泄処理装置によりいつでも清潔な状態が保たれるようになったケースも考えられます。

介護ロボットのデメリット

介護ロボットのデメリットとしては、価格が高いことや設置スペースを要すること、使用までに研修などの時間を要すること等が挙げられます。

また、介護スタッフの正しい理解が得られていないと、「介護ロボットの導入によってむしろ負担が増えてしまった」と感じてしまうケースもあります。この点に関しては、次章の「 介護ロボットの問題点 」で詳しくお伝えします。

介護ロボットの問題点

次世代の福祉機器として、各方面から注目を集める「介護ロボット」。政府も、本格的な超高齢社会到来の前に、介護ロボットを一般に普及させたい考えで、さまざまな政策を打ち出しています。 一方、開発や普及をすすめる中で新たに見えてきた課題もあります。

ここでは、介護ロボットをめぐる課題や問題点をまとめます。 介護ロボットONLINEでは、介護ロボットの導入実態と利用状況に関する独自のアンケートを行いました。そこからは、大きく3つの問題が浮かび上がってきました。

問題点1.普及を阻む介護ロボットの「価格」

1つめは、介護ロボットの価格の高さです。アンケートでは、介護ロボットを「導入していない」と答えた施設の半数以上が、導入していない理由として「価格が高いから」を選択しました。

介護ロボットONLINEが2017年6月から7月にかけて行った独自アンケート調査のグラフ、介護ロボットを導入しない理由の56%は価格が高いから

介護ロボットの普及率が低い現段階では介護ロボットの単価が高くなりがちなため、余裕のない介護施設では導入に踏み切れない要因となっているようです。

また、「介護ロボットを導入すればこのくらい業務負担が軽減される」などという費用対効果を表す指標が出しづらいため、介護ロボット導入が後回しになる傾向もあります。

アンケートより抜粋

 ・導入に必要なコストや手間がかかりすぎている。(グループホーム/50代・男性)
 ・費用対効果が明確ではない。 (介護老人保健施設/50代・男性)  
 ・大変便利なものもあれば、全く役立ちそうもないものがひとくくりにされており、その費用対効果が全く考えられていない。(介護老人保健施設/50代・男性)


 問題点2.”慣れるまでが大変”な「操作」「使い勝手」

2つめは、介護ロボットの操作や使い勝手の問題です。 介護ロボットは、導入して終わりではありません。介護ロボットを操作する介護職員の理解があって初めて有効活用が成り立つものです。

そのため、運用するためのオペレーションの見直しや、安全に操作するための研修などが不可欠です。 しかし実際には、介護ロボットの操作が煩雑すぎたり、研修のための時間が確保できないなどの問題があります。

アンケートより抜粋

 ・使い勝手についてももう少し簡単に扱えるようにしてほしい。(特別養護老人ホーム/50代・男性)
 ・導入は試みたいが、その過程における必要人員を割けられない。 (特別養護老人ホーム/40代・男性) 

 問題点3.介護現場と介護ロボット開発企業の「ミスマッチ」

3つめは、開発側と介護現場のミスマッチです。双方の情報・認識不足により、介護現場のニーズにそぐわない介護ロボットが開発されてしまうという課題があります。

例えば、移乗介助などにかかる負担を軽減するために役立つ装着型の介護ロボットは、しばしば現場から「装着や実装に時間がかかる」「機器自体が重い」という声が寄せられます。

介護業務の中には、臨機応変に対応しなくてはならない業務が多く存在し、介護職員は刻一刻と変化する状況に瞬時に反応することが求められています。そのような環境では、いくら高性能であっても、装着に時間がかかる介護ロボットは実用的とは言えないでしょう。

アンケートより抜粋

 ・装着型のロボットを検討したことがあるが、着用感等の疑問があるから。 (特別養護老人ホーム/40代・男性)
・介護ロボットは開発途上で実用化には今一歩と思う。(特別養護老人ホーム/60代・男性)

こうした問題の背景には、「介護ロボットの実証試験に協力してくれる施設が見つからない」という開発側の悩みがあります。実用的な介護ロボットの開発には、開発側と現場の協力が不可欠です。

その他の問題

これら3つの他にも、さまざまな問題が潜んでいます。

プライバシーの問題

例えば、近年とくに注目を集める見守り型の介護ロボットに対しては、要介護者のプライバシーが問題視されています。「カメラを使って監視することは、要介護者のプライバシー侵害にならないか」という点は、慎重に議論していくべき課題です。

マインドギャップの問題

また、「介護は人の手ですべき」という根強い意見もあります。そういった考え方を強く持っている職員に対して、どう介護ロボットの理解を深めてもらうかという問題は、開発メーカー・施設経営層ともに協力して取り組む必要があるでしょう。

設置場所の問題

商品化されている介護ロボットは、手のひらに収まるものから、天井に吊り下げて使う大掛かりなものまでさまざまなサイズがあります。大型のものは設置スペースを確保するのが困難なケースもあります。

また現状の介護ロボットは、基本的に特定の単一業務しかできないため、1人の要介護者にかかる業務をまかなうのに、多種類の介護ロボットを組み合わせて使わなくてはなりません。そうなるとコストがかかるのはもちろん、設置スペースの確保がますます困難になります。

アンケート結果を詳しく見る

どうなる?介護ロボットの今後

深刻化する介護問題の救いの手として期待される「介護ロボット」。 介護業務の負担を軽減する「介護支援型」、要介護者の自立を促す「自立支援型」、癒やしと安全をサポートする「コミュニケーション・セキュリティー型」の3領域で、日々開発が進められています。政府の支援のもとで商品化された介護ロボットも出てきており、今後に期待が集まります

一方で、普及にはまだまだ課題や問題が山積みなのも現状です。介護現場からは、より実用的で安価な介護ロボットが求められています。 介護の新しいカタチとして、介護ロボットはこれからますます注目を浴びるでしょう。

<参考資料>
厚生労働省(2015)「 2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について
厚生労働省(2016)「 平成28年版厚生労働白書
厚生労働省 老健局振興課(2014) 「 福祉用具・介護ロボット開発の手引き
内閣府政府広報室 (2013)「 介護ロボットに関する特別世論調査
公益 財団法人テクノエイド協会(2010)「介護職員の腰痛等健康問題に係わる福祉用具利用調査報告書」
公益財団法人テクノエイド協会(2014)『介護福祉経営士 実行力テキストシリーズ9 新しい福祉機器と介護サービス革命 導入の視点と活用のポイント』日本医療企画厚生労働省(2015)
社団法人かながわ福祉サービス振興会 (2012)「平成23 年度 介護・医療分野ロボット普及推進モデル事業 報告書」
社団法人かながわ福祉サービス振興会 (2012年3月15日) 『平成23 年度 介護・医療分野ロボット普及推進モデル事業 報告書』
公益社団法人かながわ福祉サービス振興会「介護ロボット普及推進事業」(2017/09/11, http://www.kaigo-robot-kanafuku.jp/category/1438992.html
介護労働安定センター (2015) 「 平成26年度介護労働実態調査

  • ページトップへ戻るボタン

    介護ロボットの基礎知識
    • 介護ロボットとは
    • 介護ロボット支援事業情報
    • 介護ロボットメーカー一覧
    • 自治体情報
    介護ロボットONLINEの執筆者募集

    人気の記事


    介護ロボットの基礎知識
    • 介護ロボットとは
    • 介護ロボット支援事業情報
    • 介護ロボットメーカー一覧
    • 自治体情報

    介護ロボットONLINEの無料メールマガジン

    介護ロボットONLINEの執筆者募集